良作!『バイオハザード0』レビュー!!

カプコン
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始めに

始めに

『バイオハザード0』はシリーズの中でも特別に難易度が高いと言われる作品です。またやや調整不足も目立つと言われています。そんな賛否両論ある本作品について個人的なレビューを書いていきたいと思います。当方のプレイ環境はsteam版、HDリマスターになります。

 

独創性完成度快適さボリュームフィクションその他判定
77477優(35)

ゲームフィクションについて

あらすじ

このゲームは『バイオハザード』一作目の前日譚であり『バイオハザード』一作目に登場したレベッカ=チェンバースと、本作初登場の死刑囚ビリー=コーエンの二人を主人公とするストーリーになっています。『バイオハザード』で展開される洋館事件の直前、エンリコ・マリーニ率いるS.T.A.R.Sブラヴォーチームはアークレイ山地で起こっていた殺人事件の調査に当たることとなりました。彼らはしかしヘリコプターのエンジントラブルで遭難し、そこで大破した囚人護送車と海兵隊員たちの惨殺死体でした。チームは犯人を脱走した元軍人である死刑囚ビリー=コーエンと当たりをつけて調査に乗り出します。その中の一人、レベッカは山中で発見した列車の探索中にビリーと邂逅、二人は生き残るために協力関係を築いていきます。レベッカはビリーとの共闘を経て、ビリーの本当の性格に気がついていき—。

爽やかなバディの友情!けれども前日譚としては

  ビリーとレベッカの凸凹バディの共闘のドラマは後の『バイオハザード6』におけるジェイクとシェリーを思わせ、ベタでありながらもラストのシーンなど、爽やかな感動を生みます。レベッカはお茶目で愛らしく、タフなビリーもカッコいい。またこのシリーズが黒沢清監督『スウィートホーム』のゲーム版より継承するゴシックホラーの甘美で崇高なムードも列車、養成所、研究所などのロケーションに漂っていて『バイオハザード』シリーズに期待される要素はきっちり押さえています。

 けれどもストーリーはちょっと淡白で、加えてそもそも『バイオハザード』の前日譚である必要性を感じられません。というのも、一般に「エピソード0」というものに求められるのはそれまでのシリーズで描写が不十分だった人物や事実の詳細が語られることでそれらに厚みが与えられることだと思います。このゲームにはそれがほとんどありません。ビリーはポッと出の新キャラクターに近いですし、レベッカにしても特に印象が改まるという感じでもなく、むしろ『バイオハザード』であれだけ取り乱していたことと本作での経験が矛盾しており、ちぐはぐな感じになっています。有能なはずの隊長エンリコにしても、遭難時に無謀な作戦で部隊を危険に陥れるなどの奇行が目立つだけで、なんともいえない印象です。

 もっともエドワード=デューイ登場、ウィリアム・バーキンは悪役としての活躍が描かれるなど、ファンに嬉しい描写も少しはありますが、つまるところ、このゲームは特に前日譚である必要性が感じられないし、むしろ前日譚にしてしまったことで『バイオハザード』との描写に不整合が起きてしまっています。コードベロニカやリベレーションズ(1.2)のような外伝的な作品でも良かったのでは…とは思いつつ『バイオハザード』シリーズのファンとしてはなんだか憎めないところもあります。

クリーチャーのデザインはいまいち

 このゲームは吸血ヒル、擬態マーカス、女王ヒルといったヒルが代表格のクリーチャーになっています。ただし、それ以外のクリーチャーはスティンガー、エリミネーター、インフェクテッドバットなど、動物そのままの造形のものも多く、いまいちなデザインかもしれません。

  また新キャラクターでありアンブレラやTウィルスの起源であり諸悪の元凶かつ、岩窟王めいた復讐鬼ジェームズ・マーカスは後のリベレーションズの某キャラクターを思わせ印象的です。

ゲームメカニクスについて

新システム

アイテムボックス廃止、パートナーザッピング

 『バイオハザード』シリーズは初代からアドベンチャーとしてのデザインが完成されていましたが、それゆえにマンネリ打破のための挑戦の連続でした。たとえば『バイオハザード2』ではザッピングシステム、『バイオハザード3』では無敵の追跡者、緊急回避の要素が取り入れられ、システムのマイナーチェンジが図られてきました。『バイオハザード0』における挑戦とはパートナーザッピングシステムと、アイテムボックスの廃止でした。

 パートナーザッピングシステムとは、ビリーとレベッカという二人のプレイアブルキャラクターを切り替えながら探索や戦闘を進行するシステムのことです。共闘によってようやく突破できるシチュエーションは新鮮な感動と驚きを生みます。

 またアイテムボックスが廃止され、代わりにアイテムの設置が可能になりました。これによりアイテム管理がシビアになり、またキーアイテムを要所にあらかじめ置いておくなどの戦略も取れるようになりました。

アイテムボックス廃止の功罪

 この二つの新システムのうち、とくにアイテムボックスの廃止には批判が集まっており、パートナーザッピング制は『バイオハザード リベレーションズ2』で取り入れられられているのと対照的に、その後これが積極的に継承されることはありませんでした(『バイオハザード ヴィレッジ』などアイテムボックスないけれどアタッシュケースという十分なアイテム管理スペースがある作品もありますが)。

 たしかにアイテムボックスの廃止によって、ゲームフィクションにリアリティが生まれている部分はあります。アイテムボックスというのはそこに入れておけば任意のアイテムボックスからアイテムを回収できるというシステムで、ゲームメカニクスのデザインとしては合理的でありつつ、ゲームフィクションとしては合理的な説明を欠いています。それがなくなることでゲームフィクションにおけるサバイバル描写は高められているとも言えます。

 けれどもそれはゲームメカニクスのデザインとしてどうなのか。たしかに謎解きにおいてアイテムを置くというアプローチが増えたものの、アイテムボックスの廃止によってゲームメカニクスにおける戦略の幅は部分的にはむしろ縮小もしています。従来のシリーズにおいてはアイテムボックスによるリソースの管理、配分の戦略がゲームメカニクスの上での興趣となっていました。けれどもそれを廃止したことによってこの作品ではアイテムの取捨選択が強く求められすぎます。回復アイテムなどはせっかく節約したところで(高ランクを追求するならなおさら)捨てざるを得ないため、回復アイテムは道中に落ちているものを拾わず消費することを余儀なくされるようになってしまっています。慣れてくるとHARDにおいてもそれほど回復アイテムは必要なく道中のものでも事足りるものの、初心者には厳しいバランスになっています。またアイテムをまとめて収納する手段がないため、床にまとめてアイテムを置いておくと拾うのに難儀もします。

 アイテムボックスの廃止は失敗とは思わないですし、この作品においては一応のバランスが取れていますが、成功と呼ぶには課題も多いように感じられます。

パートナーザッピングシステムは楽しい。けれども…

 パートナーザッピングシステムはなかなか楽しいシステムです。けれども、課題も多いように感じられます。このゲームではレベッカは弱すぎます。ゾンビの攻撃数回で死亡してしまうため、安心して前線にたたせることができません。特に取り柄がなく、せいぜいハーブの調合ができる程度です。このせいで共闘というよりは、レベッカが足を引っ張っているような印象になってしまっています。『バイオハザード リベレーションズ2』ではパートナー同士の差別化に成功しているので、これは残念です。

システムのデザインで対応できないエネミー

 このゲームはアイテムボックス廃止もそうですが、バランスの調整にギリギリ成功しているものの、調整不足も目につきます。代表格は中ボス・インフェクテッドバットです。このゲームのシステムは『バイオハザード』に始まる見下ろし型のアドベンチャーゲームで、一般的なTPSやFPSとは空間デザインやゲームメカニクスのデザインが異なっています。戦闘においてはエイムが要求される訳ではなく構え時にオートで追尾するため、ヘッドショットを狙うタイミングや攻撃回避に成功することに対してリターンがあります。

 しかしこのインフェクテッドバットはそうしたシステムで容易に捌けず運要素の強いものとなっています。このエネミーは空中を飛び回りながら攻撃を仕掛けてくるのに加えて、途中で雑魚エネミーの小バットを無限に呼び出します。この小バットが曲者で、構え時にオート追尾する対象に小バットも含まれてしまっています。そのため、オートでインフェクテッドバットの方を追尾せず小バットを追ってしまい、ボスに攻撃することがままならなくなります。要するにこのエネミーは出るゲームを間違えているというか、システム上安定した立ち回りを見いだせない厄介なボスになっており、プレイヤーのスキルでもなかなか補いきれません。ナイフ縛りでも最大の障壁です。

 他のボスエネミーであるスティンガー、プロトタイラント、女王ヒルなどは安定して捌けるようになるため、もう少し調整を頑張ってほしいところでした。

難易度調整は上々!けれども…

 巷ではよく「『バイオハザード』はシリーズでもっとも難しい」と言われます。ノーマル難易度でのクリアに関して言うなら、確かにそれは正しいと思います。ただしリメイク版『バイオハザード』よりやや難しいくらいで、シリーズのなかで圧倒的な難しさという訳でもありません。また、Sランクを獲得する条件もタイムのみが要求され、無限武器やセーブ回数の制限もなければ、ハードでも無限武器なしでなんとかなる難易度であって、RE2のハードコアS+のほうが遥かに難しいです。

 それでもこのゲームが難しいのは、前述のレベッカの弱さ、アイテム管理のシビアさ、それらに由来する詰みやすさによります。このゲームはレベッカが弱いため、ビリーに武器を持たせてレベッカは荷物運びを担いがちなのですが、しばしばパートナーと分断されるイベントが発生します。そのときにレベッカに有用な武器がないと、アイテムボックス廃止もあわさって進行困難になることがままあります。また毒の状態異常を回復するアイテムに個数制限があり、それによる詰みも起こり得ます。ラスボスもリソースがないときついです。つまるところこのゲームはアイテムの取捨選択がシビアで、容易に進行困難になりうるため、それが難しいという印象を醸成します。ただ作品自体のボリュームは短いため、詰みに陥ってもやり直すのはそれほど苦ではないと思われます。

総評

佳作

 名作であるリメイク版『バイオハザード』(02)のマイナーチェンジ版であって完成度は高く、バランスの調整にもぼちぼち成功してはいるものの、粗もやはり目立つ内容です。リメイク版『バイオハザード』が好きなら、高難易度でもなんとかクリアはできるし楽しめるでしょう。

おすすめな人

・初期の『バイオハザード』シリーズ(1.2.3)が好き
・骨太のアドベンチャーが好き
・ゴシックホラーが好き

関連作品、関連おすすめ作品

・『バイオハザード リベレーションズ2』:パートナーの交代システムが実装された作品。

・『バイオハザード ヴィレッジ』『バイオショック』『アンチャーテッド』シリーズ(1.2.3.4):ビデオゲームというハイブリッドなメディアにおけるゲームメカニクスとゲームフィクションの意味論の擦り合わせのなかで起こる、ゲームフィクションにおける一見不合理な描写に合理的な説明が与えられる展開があります。

・『スタア誕生』『ダンサー=イン=ザ=ダーク』:ミュージカルという、音楽、舞踊と演劇、映画のハイブリッドなジャンルにおける各々の意味論の擦り合わせのなかで起こるフィクション世界における一見不合理な描写に合理的な意味合いが与えられています。

・『新感染  ファイナル・エクスプレス』:列車パニック映画とゾンビ映画の併せ技です。0とシチュエーションが共通します。

・『龍が如く0』:エピソード0の名作

参考文献

・ゲームカタログ@wiki〜名作からクソゲーまで〜(最終閲覧日2023/4/28.)

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