神ゲー気味。『ファイナルファンタジーⅦ リメイク』レビュー!

スクエニ
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始めに

注意

この感想レビューには『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』『ファイナルファンタジーⅦ』の若干のネタバレが含まれています。

始めに

『ファイナルファンタジーⅦリメイク』(2020)は、『ファイナルファンタジーⅦ』のリメイク作品です。もうすぐ『ファイナルファンタジーXⅥ』『FF7 リバース』の発売を控えているので、予習も兼ねて(?)この作品の紹介をしていきたいと思います。

独創性完成度快適さボリュームフィクションその他判定
784784優(38)

ゲームフィクションについて

あらすじ

この作品は『ファイナルファンタジーⅦ』のリメイクであるため、あらすじはそれと概ね共通します。 人類の住む「星」は神羅カンパニーが牛耳っています。その拠点・ミッドガルでは、星の生命エネルギーである魔晄を吸い上げています。それに反抗するのがアバランチです。アバランチのリーダーバレットの指揮により、壱番魔晄炉爆破のテロが行われます。計画にはアバランチのメンバーであるティファと、その幼なじみである元ソルジャークラウドも加わっており…という場面で物語は始まります。  

 セフィロスとクラウドという二人のメインキャラクターがジェノバという存在に翻弄され、自分を作るというコミュニケーションに苦悩し…というのがドラマの中核です

運命としてのオリジナル

 このリメイク作品において特徴的であるのは、オリジナル版の展開から地続きのものとして世界観を設定している点です。つまり、この作品は単にオリジナル版の再生産版という訳ではなく、オリジナル版のある種の続編として展開されているのです。

 コンセプトとして『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズと近いと思われます。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』は、テレビ版や旧劇場版のリメイク作品という装いでしたが、やがて旧シリーズから発展した時系列的に後のストーリーだと判明します。『ファイナルファンタジーⅦリメイク』も同様に、オリジナル版からの連続性が匂わされていますが、現在のところ詳細は不明で、三部作の残り二作で明かされるのでしょう。

 現在のところ、強烈にオリジナルからの連続性を匂わせているのはフィーラーというキャラクターです。フィーラーとは、物語の要所要所で現れる、黒い布をまとった幽霊のような姿の存在で、主人公たちがオリジナル版から逸脱する行動をとろうとすると、それを矯正しようと行動します。オリジナル版という運命を維持しようとする存在、それがフィーラーです。

オリジナル版も、ジェノヴァが導く運命に反逆するドラマ 

 ところで、オリジナル版ではジェノヴァという宇宙生物が自らの力を使って人類の歴史に干渉し、それによって自己の欲求を充足させようとしていたという設定があり、そうした構造は、オリジナルという宿命にドライブされつつそこからの逸脱を試みる本作品の主人公たちの行動やコンセプトと重なります。『ファイナルファンタジーXⅡ』(ZA)『ファイナルファンタジーXⅢ』シリーズ(1.2.3)もそうですが、作品のテーマとして人間が神などの何らかのエージェントのドライブする運命への反抗するという主題があります。オリジナル版の『ファイナルファンタジーⅦ』にもそうしたテーマがあり、シリーズの前作品からも継承するそうした主題をリメイクというコンセプトの次元においても達成しているのは卓越していると思われます。

類似のコンセプトの見出だせる作品

 本作品と共通のベクトルのコンセプトを掲げる作品としては山崎貴監督の映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』があるでしょうか。これはビデオゲーム作品の映画での翻案でありますが、第二次の語り手(=作中作)によって、ビデオゲームという芸術に固有の、複数芸術としてのあり方を映画において表現しようとしています。

 ビデオゲームという芸術ジャンルには複数芸術であるという特性があります。芸術には単数芸術と複数芸術があり、複数芸術のなかには物体芸術と出来事芸術があり、出来事芸術には上演芸術と再生芸術があります。ある作品の受容において直接に経験される具体的な対象はその作品の「事例」といい、一つの作品に対して一つだけの事例しかあり得ない芸術形式を「単数芸術」、逆に一つの作品に複数の事例がありえる芸術形式を「複数芸術」といいます。「複数芸術」においては一般に、作品を制作することのほかに、事例を実現する手続きを経なくてはなりません。『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は、そうしたビデオゲームに固有の現象を映画において第二次の語りの導入によって懸命に再現しようと試みておりますが、世間の評判は芳しくないようです。

 オリジナル『ファイナルファンタジーⅦ』も複数芸術であって、平たくいえばプレイヤーの数だけ事例があることになります。本作品の制作スタッフも、消費者と同じようにおのおのの事例を体験しているのです。そうしたスタッフや消費者がそれぞれのオリジナル作品の事例から育んだゲームプレイの経験や思いを巧みに再現の次元で達成した良リメイクと、私は本作品を評価します。

 オリジナルへの挑戦であり最大の賛辞

 本作品はオリジナルへの挑戦であると同時に、原典への敬意に満ち溢れています。ロケーションやモーション、キャラクター、UIのデザインにいたるまで、オリジナルの再現がバッチリで、リメイクとしてこれ以上の水準は難しいというくらいに高められています。

やはり受け入れがたい分作商法

 あちこちで批判されていますが、やはりこのゲームの分作商法やアップグレート版の売り方には不満があります。

ゲームメカニクスについて

戦闘

ATB,リアルタイムアクション,スキルデザイン,バースト

このゲームのおおまかな特徴として、シリーズを代表するATB(アクティブタイムバトル、時間制約つきのターン制)が導入されています。ATBシステムのシリーズ共通の特徴として、各々のユニットに対して、一定の待機時間の後にコマンド入力のターンが与えられ、コマンドを入力したならばしばらくの待機時間を経なければコマンド入力をすることができないという特性があります。本作品ではそれにリアルタイムのアクション要素が加えられ「たたかう」「回避」「防御」など一部のアクションはリアルタイムで常に入力可能でありつつ、魔法、アイテム、アビリティなど、一部のアクションは時間経過などで蓄積するATGを一定量消費しないと入力できないという、ATB(アクションタクティクスバトル)システムが取られています。

 またエネミーユニットにはバーストゲージというものが割り振られ、これは弱点をつくなど特定アクションに成功すると蓄積し、マックスになるとエネミーユニットはバースト状態になり、この間は被ダメージにプラスの補正値がかかります。

 ユニットのスキルはマテリアというアイテムを装備したり、装備の熟練度を高めることで習得する固有アビリティを得るなどしてデザインします。プレイヤーはエネミーの特性にあわせてマテリアを装備してスキルをデザインし、カウンター、連続攻撃、弱点攻撃などのアクションを成功させて相手をバーストさせて大ダメージを狙いつつ、モーションをよく捉えてガード、回避などで被ダメージを抑えるように立ち回ります。

ATBの進化系で完成度は高い。大きな不満はないものの…

  『ファイナルファンタジーXⅡ』(ZA)『ファイナルファンタジー ライトニングリターンズ』のように、ATBの発展系として高いレベルでゲームメカニクスはデザインされています。ただ若干難易度が高く、ATBを消費しないとアイテム、魔法を使用できず回復することができないため、初心者には厳しいつくりになっています。またブリザド、エアロは数秒後に着弾点にダメージを与える仕様のため、動き回る敵に全くあたらず、改善の余地を感じます。

 プレイヤーが操作していないキャラクターは指示もほぼ出せず単純なアクションしかしてくれないなど弱く設定されていますが、これは調整不足とは思いません。ただ賛否あるでしょう。

初見殺し要素

 本作はステージ中にメンバーの離脱や加入が予想できない形で頻繁にあるのと、マテリアが戦闘中に着脱できない仕様上、全体的に初見殺しで立ち回りが見えると容易に倒せる、みたいなエリアやボスが多いです。

探索

 本作はよく言われますが、探索要素のテンポが悪いです。原典のボリュームを増大するために移動に割かれる時間が多くてテンポが悪いです。

 また、原作においてもミッドガル編は自由度が低かったのもあって、探索が薄味です。

総評

原典への挑戦であり賛辞でもある良リメイク

 原点に捧げる最高のアンサーです。良作。次回作も期待が持てます。

関連作品、関連おすすめ作品

・『ファイナルファンタジーⅩⅡ』(無印,ZA)『ファイナルファンタジーⅩⅢ』シリーズ(1.2.3):人類の定められた運命との戦いのドラマ

・『ファイナルファンタジーXⅤ』:定められた運命を受け入れるドラマ。

・『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリーズ』:オリジナル版から連続するリメイク作品。

・フョードル=ドストエフスキー『罪と罰』、パトリシア=ハイスミス『太陽がいっぱい』:自己を作るというコミュニケーション、公共圏における自己実現の破綻のドラマ。

・村上春樹『風の歌を聴け』:宿命としての過去や過去のテクストに脅かされつつ自己の自由を得ようとするドラマ。

参考文献

松永伸司『ビデオゲームの美学』(慶應義塾大学出版会,2018)

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