始めに
始めに
今日はアドベンチャーゲーム『トゥームレイダー』(2013)についてレビューを書いていきます。面白いんですが物足りない作品です。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
6 | 8 | 4 | 7 | 4 | 4 | 良(33) |
ゲームフィクションについて
あらすじ
新米考古学者ララ・クロフトは、ロスという父の知り合いに誘いで、伝説の邪馬台国を探すため、エンジュランス号で調査旅行に出かけました。ロスの他、考古学者のホイットマン、整備士の黒人女性レイエス、シェフを務めるジョナ、操舵手の老人グリム、船舶技術者のアレックス、ララの親友のサムが一緒でした。一行は、魔の海域「ドラゴントライアングル」に邪馬台国があると見て、その海域を目指します。しかし、ドラゴントライアングルに入ると大嵐が起こり、船は難破します。一行は謎の孤島に漂着し…
不気味で電波なロケーション
この作品はドラゴントライアングルにある謎の孤島に生きる、邪馬台国の末裔の侍軍団との戦いを描きます。こう書くと珍妙で面白そうなんですが、なんか面白くないんです。
タランティーノ監督の『キル=ビル』シリーズ(1.2)のように、バーレスク、サヴォイオペラ(『ミカド』)、シュルレアリスム(アポリネール)やその系譜を継ぐ作品に見られる誇張的な「日本」表象というのは日本人から見てもキッチュで面白いですが、この作品は黒澤明映画(『羅生門』)の中世を微妙にグダらせたような、なんとも言えない不気味で電波な世界観になっています。しかも全体的に陰鬱なシーンや陰惨なシーンが続くので、気が滅入ります。
魅力のないキャラが次々死ぬ。痛々しすぎる暴力
この作品はキャラクターやストーリーに魅力が皆無で、あと序盤からキャラがたくさん出てきて遭難して散り散りになるため、誰が誰だかわからなくなります。そして誰が誰だかわからないままキャラクターが死んでいきます。
主人公もとにかくキャラクターとしての掘り下げが少なく、ベタな「闘う女性」という感じです。あと主人公がなんかボコボコにされたり建物の崩壊に巻き込まれたり川に流される展開が、痛々しくかつ執拗に何度も描かれ、見ていて気が滅入ります。『アンチャーテッド』シリーズ(1.2.3.4)と違って、全然アクションやドラマに魅力がないです。
三部作前提で引き伸ばし気味なドラマ
この作品は三部作(1.2.3)前提で作られているようで、『ライズ=オブ=トゥームレイダー』『シャドウ=オブ=トゥームレイダー』と続くのですが、そのせいで父の死をめぐるトラウマと復讐のストーリーがなんだかかなり水っぽいものになっています。
ゲームメカニクスのデザインとしてはいいのに、ゲーム作品としては…
ストーリー、演出まわりに対する雑感をまとめると、ゲームメカニクスのデザインの面白さをゲームフィクション部分の劣悪さが相殺しています。『アンチャーテッド』シリーズ(1.2.3.4)にTPSとしてのゲームメカニクスのデザインでは部分的に優っていても、「ゲーム作品」として捉えたときにはずっと物足りない印象になっています。
ゲームメカニクスについて
戦闘中心のTPSアドベンチャー、成長要素
この作品は『アンチャーテッド』シリーズ(1.2.3.4)のようなTPSとなっています。従来の『トゥームレイダー』シリーズは探索や謎解き中心でしたが、今回は戦闘が中心になっています。
賛否両論と思われるのですが、TPSとしてのクオリティは上々で、遊んでいて楽しいです。なんなら『アンチャーテッド』以上かもしれないと思われます。リブート三部作はシリーズが進むにつれてステルス要素がどんどん強くなっていくのですが、今作では抑えめで、銃撃戦を避けられない場面が多いです。
成長要素は敵を倒して経験値を貯めてスキルを解禁したり、資源を回収して武器を強化したりできます。特別新しい要素はないですが、成長を実感しやすく楽しいデザインです。
導線がイマイチな謎解き
リブート三部作(1.2.3)は、全体的に謎解きが低水準です。なんというか、うまく説明できませんが悪問のようなパズルが多いです。
この手のゲームは、1.状況を構造化して捉えて2.解決へのアプローチを探ること、が要求されます。しかし解として想定されている状況の構造化やそれへのアプローチというのが、我々が普段目にする物理現象などから培う常識的感覚をかなり逸脱するようなものが多いのです。『SIREN』というゲームで「敵の注意を引かなくてはならない、どうするか」という状況があって、それへのアンサーが「凍らせたタオルの上に貯金箱を乗せて溶けるのを待つ」なのですが、そういう類の奇問が多いです。そのため不十分な導線も相まってしばしば困惑します。
総評
TPSとしては上上。しかし…
TPSとしてのクオリティは高いのですが、探索、謎解き要素、ストーリー、キャラクターの弱さから、ゲーム作品としてはイマイチです。三部作の第一作ですが、二作目が最高傑作です。
関連作品、関連おすすめ作品
『ラストオブアス』シリーズ(1.2),『バイオハザード リベレーションズ2』,サイコブレイクシリーズ(1.2)資源のエコノミー要素のあるシューター。