神ゲー未満良作以上。『十三機兵防衛圏』レビュー!!

ヴァニラソフトウェア
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始めに

始めに

 今日は『十三機兵防衛圏』のレビューを書いていきます。

独創性完成度快適さボリュームフィクションその他判定
78469優(36)
  • 素晴らしいアートワーク
  • よく練られたシナリオ
  • ミステリ色が強くてリプレイ性に乏しい内容
  • 貧相な絵作りのRTS

ゲームフィクションについて

あらすじ

 1985年の日本に突如「怪獣」が現れます。13人の少年少女たちはそれぞれの思いを抱き、大型ロボット兵器「機兵」に乗り込んで怪獣との戦います。

SF学園ジュヴナイル,素晴らしいアートワーク

 作品はさまざまなジュヴナイル作品からの影響が顕著です。大林宣彦監督映画(『ふたり』『時をかける少女』)や押井守監督作品(『スカイクロラ』)、青春残酷物語SF『新世紀エヴァンゲリオン』(TVアニメ版)、鬼頭『ぼくらの』、電脳世界SFの『メガゾーン23』『ゼーガペイン』など、ロボットSF、ジュヴナイルSFの集大成といった趣があります。

 アドベンチャーパートとRTSパートがあるのですが、アドベンチャーパートは基本的に横スクロールの二次元の空間なのですが、背景やキャラクターが圧倒的な緻密さで描かれています。温かみのある絵画的なイラストで、独特のムードをノスタルジーたっぷりに演出しています。『朧村正』『オーディンスフィア』『ユニコーンオーバーロード』とその点共通です。

焦点化の実験

 この作品の魅力はなんといっても焦点化の実験です。十三人のキャラクターそれぞれに焦点化するそれぞれのエピソードがあり、それらがパズルのように繋がっていくところにこの物語の快楽があります。映画だと『パルプ=フィクション』『運命じゃない人』などと近いでしょうか。ゲームでは『SIREN』シリーズ(1,2.3)『428 封鎖された街で』と近いでしょうか。プロットには矛盾がなく展開されていて、伏線の作り込みが圧巻です。

魅力的だが二周目が楽しみづらい物語

 この作品のストーリーは面白いのですが、ミステリー要素が強いため、続きを知っているととにかく退屈する内容で分岐によるインタラクティブ性の希薄さも相まってリプレイ性に乏しく、シチュエーションとして盛り上がる場面は少なかったです。世界観の謎をめぐるミステリー色が強いせいで、キャラクター人一人のエピソードも(というかそもそもドラマの中心が13人の主人公ではなく、それと密接に関連するサブキャラクター)一部を除いてドラマとしては弱くなっています。特に女性キャラクターのシナリオは弱い印象を受けますし、何をしていたのか思い出せないキャラクターも多いです。

 また世界観も矛盾はないとはいえ、どんでん返しが多すぎて、とっ散らかった印象を受けます。MGS2とかみたいです。

RTS部分の貧相なビジュアル

 この作品はアドベンチャーパートとRTSパートがありますが。RTS部分の演出があっさりしていて、すごく貧相な印象を受けます。アドベンチャーパートの作り込みがすごいためなおさらです。

 具体的には、RTS要素では簡略化されたアイコンでユニットが示されるだけで、イベントも立ち絵だけで進みます。カットイン演出も全然ありません。アドベンチャーパートとの落差があんまりひどいです。

ゲームメカニクスについて

アドベンチャーパート(横スクロール,ナラティブチョイス)

 この作品はアドベンチャーパートとRTSパートからなり、アドベンチャーパートは横スクロール式になっています。自由度は低く、ナラティブチョイスのみです。また、特定のフラグを立てないと、別のキャラクターのシナリオを進展させられなくなります。

 基本的には遊びやすいのですが、フラグ管理が結構シビアな部分もあります。

 また、チュンソフトのサウンドノベルのように状況を構造化して適切なナラティヴチョイスをする場面もなく、総当たり式のADVです。プレイヤーが推論をはたらかせるべき場面は少ないです。

RTSパート(デッキビルド,エリアコントロール,リアルタイム,ターン)

 怪獣と機兵の戦いを描くRTSパートでは、出撃するユニットのデッキビルドと、エリア移動が肝になります。リアルタイムで進行する状況をよく見極めてターンを管理して対応することが求められます。また武器種、スキル、ユニットの特性の把握を要求されます。ジャンル的には『勇者のくせになまいきだ』シリーズと近く、『ユニコーンオーバーロード』に継承されます。

 インターセプターなど、壊れスキルもありつつ遊べる内容ではありますが、如何せんADVパートと比較して演出が弱く、またシチュエーション的にも熱いものがなくて、あっさりした印象です。すごく深い遊びがあるわけでもありません。そもそも敵の「怪獣」の一つ一つに濃い設定やドラマがないので、魅力を欠いています。

 ボリュームもクリアするとあまりやることがないです。

総評

ジュヴナイルの名作ADV。RTSは今ひとつ

 ペルソナシリーズと並び立つジュヴナイルADVの名作ではありますが、RTSパートの演出、ゲーム性ともに今ひとつでした。ちょっと惜しいです。

関連作品、関連おすすめ作品

・『ペルソナ5』(R)、『九龍妖魔學園紀』(re,ooa):ジュヴナイルADV

・『パラノマサイトFILE23本所七不思議』:クラシックなテイストのADV

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