良作。『バイオショック』レビュー!!

2Kゲームズ
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始めに

始めに

 今日は『バイオショック』についてレビューを書いていきたいと思います。シリーズ(1.2.in)の一作目です。

 

独創性完成度快適さボリュームフィクションその他判定
4優(36)

ゲームフィクションについて

あらすじ

 1960年。主人公・ジャックは、旅客機の機内で「恐縮だが…」と書かれたプレゼントをながめていました。その後、原因はわかりませんが旅客機は大西洋へ墜落します。
なんとか助かったジャックは灯台にたどり着きます。そこには潜水艇があり、それに乗り込んだ彼は「ラプチャー」へと行き着いてしまいます。ラジオを通じてアトラスという男が語りかけてきて、ジャックに助言を与えてくれます。

リバタリアンSFのパロディ

 この作品はヴァーホーヴェン監督『ロボコップ』『スターシップ=トゥルーパーズ』やSW4などのような、リバタリアン的な価値観を主題とする作品に対するパロディとなっています。ヴァーホーヴェンの作品も、リバタリアン的な価値観への異議申し立てを唱える作品でしたが、本作がパロディの対象とするのはリバタリアニズムの中心を示す「自由」「自由意志」です。本作の揶揄する対象であるリバタリアン思想家アイン=ランドにとっても、自由と自由意志に基づく労働による自己実現は主要な概念になっています。詳しい考察はこちら

 この作品は目的に従って行動する一本道のFPSというゲームメカニクス上の構造的特徴に、ゲームフィクションの上から合理的な説明が与えられています。また、プレイヤーの介入によってドライブされることで実現するジャックの自由な振る舞いに対して好意的に評価しているものと捉えられます。

レトロフューチャー

 この作品はレトロフューチャーと呼ばれるジャンルで、『Fallout』シリーズ(1.2.3.4)などのような、アナクロニズムな世界観が特徴的です。バーレスクのようなバロックでキッチュなディストピアが美麗なグラフィックで描かれています。フォトリアルとは違うカートゥーン調のデフォルメされたキャラクターやロケーションが魅力的です。

 またこの作品はオーウェル『1984』のような全体主義のディストピアを描く作品となっています。『1984』は、現実社会主義国家における全体主義の横行を描いたものですが、この作品はアイン=ランドの掲げる最小国家主義社会における、カルト的な暴力と恐怖による支配の蔓延を描いています。社会主義国家というものはもともと、共産主義社会を実現するための準備的な段階としてエンゲルス以降のマルクス主義哲学者において位置づけられてきました。マルクスにおけるユートピア思想であるところの共産主義にしてもアイン=ランド的リバタリアニズムにしても、個人の自由と労働による自己実現を志向するという点で共通し、その実現のための方策やプロセスに異同があります。けれどもその両者が同一のディストピアを形成してしまうというところに本作のパロディ作品としての意図があります。

 結局、共産主義を追求する現実社会主義国家においても、リバタリアニズムを掲げる共同体にしても、それが利他と共有の原則に根ざすものではない限り、容易に支配と専制による、マルクスが糾弾した資本主義社会によく似た抑圧的コミュニティを形成すると本作は示唆します。

ゲームメカニクスについて

FPSアドベンチャー

 この作品はFPSのアドベンチャーになっています。アプローチは武器に加えてプラスミドによる超能力やトニックによる能力補正が、道中で手に入るリソースを消費して解禁していくことができます。攻略や探索の自由度は低いものの、攻撃のバリエーションは豊富です。

 死んでもゲームオーバーになることはないし強力なスキルが多いため、難易度はかなり低いです。けれどもすごくバランスが悪いわけでもなく、遊びやすくてお手軽な難易度という印象です。

 またナラティブチョイス(リトルシスターを助けるか殺すか)によるルート分岐があるのですが、助けないことにほぼメリットがないため、分岐は形骸化しています。

総評

名作FPSアドベンチャー

FPSアドベンチャーの名作です。ボリュームには難があるものの、今遊んでも面白いです。

関連作品、関連おすすめ作品

・『Dead Space』(2023リメイク),『RoboCop: Rogue City』:レトロフューチャー

 

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