始めに
始めに
今日は『ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ』についてレビューを書いていきます。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
9 | 9 | 3 | 8 | 8 | 2 | 優(39) |
ゲームフィクションについて
あらすじ
イヴァリースにはダルマスカという国があり、その統治元の帝国アルケイディアと敵対国であるロザリアの戦争がありました。ダルマスカ王国の王位継承者、アーシェ=バナルガン=ダルマスカは戦争経験やアルケイディアに夫を殺されたため、帝国へ憎悪を抱いています。そして「破魔石」を用いて復讐を果たそうと各地を探し歩いています。そんなアーシェと帝国との戦いが描かれます。
主人公はヴァン!…と見せかけてアーシェな物語
この作品は一応ヴァンという少年が主人公で、序盤こそ兄をバッシュ将軍らしき男に殺されたヴァンの物語が描かれるのに、アーシェらと合流したのち、ヴァンはほとんど出番がなくなります。ヴァンも序盤でバッシュへの誤解を解いて和解するため、ヴァンをめぐるエピソードはすぐに完結してしまいます。
基本的にこの物語で、因果的なドラマの連なりの中で葛藤や成長の主体となるのはアーシェで、その意味でアーシェが主人公です。
架空戦記、ミクロなアクターの視点から
この作品はトルキーンなどを思わせる、クラシックなスタイルのファンタジーで、架空戦記という大河ロマンが緻密な設定でデザインされた世界の中で描かれます。そうした歴史の動乱の中で、割と主人公たちはサブのアクターで、あまり大局的な部分に影響を与えません。この点が人を選ぶ模様です。淡々と、主人公たちの視点を通じて歴史の動きを描くような印象を受け、登場人物の心理や葛藤の描写も少なめです。
けれども世界観は魅力的で、この世界に浸っていられるのが楽しいため、私はこの作品のストーリーは好きです。
ヴァンという主人公、バルフレア
この作品はヴァンという主人公と声優・武田航平の演技がよく批判されます。声優経験の少なさから、かなり棒読みで滑舌も悪いです。けれども私はこれも好意的に捉えています。ヴァンという主人公はいい意味でムードクラッシャーなキャラクターで、その意味で武田氏の調子はずれの演技は合理性があって『鬼武者』の金城武のような珍妙さは感じません。
またバルフレアという主人公格の一人過度にプッシュされるのもまあちょっと気にはなりますが、そこまで気にはならないです。
ゲームメカニクスについて
ATB、ガンビット、ライセンス、ジョブ
この作品を代表するのはガンビットというシステムです。この作品はシリーズ伝統のリアルタイムのターン制(ATB)が設定されているのですが、その中でガンビットをデザインして戦います。これは味方NPCの行動を環境に合わせて決定するアルゴリズムで、そのデザインを図るのがゲームのコンセプトとなっています。『カルネージハート』『アーマード=コア フォーミュラフロント』のような感じになっています。
また、味方NPCのスキル、アビリティ、装備のデッキビルドの根底をなす要素としてライセンスボード、ジョブシステムがあります。NPCにはそれぞれジョブを二つ割り振ることができ、ジョブごとにバリアブルアクションと固有のライセンスボードがあります。戦闘をこなすと手に入るポイントを消費することで、ライセンスボードを開拓していくことができ、これによってスキルやパラメーター補正が得られます。
システムは7リメイクシリーズ(1.2.3)、LRに負けず劣らず洗練されたデザインです。
モブハント
この作品の特徴はモブハンとというサイドストーリーです。モブと言われるモンスターの討伐依頼を引き受け、これをこなしていきます。これを進めることで作中最強の裏ボスヤズマットと戦えます。奥深く、やりごたえのある内容になっています。
難易度は原作より簡単。ゲームテンポも向上
全体的にオリジナル版より易化してかなり遊びやすく、悪く言えば大味になっています。育つと主人公たちはどんどん強くなるため、裏ボスもそれほど強くありません。低難易度プレイなどのやり込みプレイで初めてシステムの奥深さを感じられるくらいの印象です。
また2倍速、4倍速の追加などで戦闘テンポは向上しているものの、できればモーションも倍速用に追加調整して欲しかったです。ただ動きを倍速にするのでチャカチャカ動き回って見栄えが悪いです。
総評
癖が強いだけでかなりの名作
本作は癖が強いもののかなりの名作です。縛りとかで工夫すれば長く遊べます。
関連作品、関連おすすめ作品
・『ゼノブレイド』シリーズ(1{DE}.クロス.2.3):MMORPG的な空間デザイン。
・『ユニコーンオーバーロード』『サバクのネズミ団!』(改):アルゴリズムのデザイン。