始めに
今日は『ファイナルファンタジーXVI』についてレビューを書いていきます。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
6 | 7 | 4 | 6 | 6 | 5 | 良判定(34) |
- 基本的にアクションゲーとしては良作
- グラフィック
- 面白いがナンバリングを背負える内容か疑問
- スピンオフでやるべき内容
- 革新性の欠如。全体的に中途半端
ゲームフィクションについて
あらすじ
少年期。主人公クライヴは、ロザリア公国を治めるロズフィールド大公家の第一王子にして嫡男です。フェニックスゲートを襲撃したザンブレク兵を相手に奮戦するものの、謎のフードの人物を目にした途端に激しい頭痛に襲われ、そんな中弟・ジョシュアが召喚獣「黒きイフリート」に目の前で殺されます。
翌日ザンブレク兵によって発見され、裏切り者である母の謀略で雑卒の身分になります。青年となってからは、奴隷階級であるベアラーの刻印を頬に刻まれた傭兵集団の一員「ワイバーン」として活動し、ジョシュアの仇である黒きイフリートへの復讐にとらわれています。
FF12など松野泰巳風の政治劇、架空戦記ファンタジー
本作は松野泰巳(FF12[ZA]の監修)脚本のような、緻密でかっちりした設定の中での架空戦記、政治劇、歴史物語的なドラマになっています。『ゲーム=オブ=スローンズ』からインスピレーションを得たとのことですが、実際その影響は演出面にも顕著で、ハリウッド映画や海外ドラマのようなド派手な演出が見どころです。
あとは諫山『進撃の巨人』とか、復讐劇、政治劇、異文化理解を描く作品としての共通性が見えます。つまり色々既視感のある、ベタな設定も目立つというかそんな感じです。えっちなシーンもいっぱいあるので、FFファンのパパやママは一人で遊ぶことを強いられます。
基本的には辛くはない
とにかくFF15を失敗と捉えて手堅く勝負しようという心意気が伝わってくる内容で、復讐と異文化理解を主題とするシナリオは『テイルズ オブ アライズ』にも似ていて、圧倒的な完成度というほどではないにしてもぼちぼちのクオリティに仕上がっています。ムービーのパッチワークだったFF15のようなヘンテコりんな印象は全然受けず、まとまりはいいです。
一方で、松野泰巳脚本の作品と比べるとどうにも設定や政治劇の膨らませ方もベタな部分もあって、若干見劣りはします。あと物語のテンションも尻すぼみです。
やっぱ辛い部分
この作品はゲームフィクションにしてもゲームメカニクスにしても新鮮さ、独創性、革新性がないです。FFは6.7(リメイクシリーズ[1.2.3])以降は特にそのゲームフィクション部分やグラフィックなどの圧倒的な革新性や緻密さを売りにしてきましたが、本作は超美麗なグラフィックで展開されるジェネリック松野FFみたいな世界設定とストーリーで、この作品ならではの売りに乏しいです。
あと戦闘とかムービーとかの全体的な演出のセンスが古臭く、特に召喚獣合戦などのQTEは周回でノイズになります。
ゲームメカニクスについて
戦闘
アクション。アビリティビルド
今回は、RPG要素がFF15よりもさらに薄まりアクションゲームになりました。システムはジャスト回避などからカウンターを当てて連続攻撃を加え、相手のウィルゲージを削ってテイクダウンをとり、大ダメージを狙っていくものです。それと時間経過で蓄積するゲージを消費したリミットブレイクの発動タイミングの戦略性があります。こう書くとわかるでしょうが、LRや7リメイクのシステムをベースによりアクション性を高めた感じです。
それにアビリティのデザインのデッキビルド要素があります。しかしそこまで育成の幅はありません。7リメイクのような奥深さや戦略性はそれほどないものの、シンプルでやりごたえのあるデザインです。
総評
まあこんな感じで戦闘はシンプルで普通に面白いですが、やや大味で単調です。それと7リメイクやLRをアクションゲームにしたらまあこうなるだろうみたいな無難な着地点で、そういう意味では驚きがないです。FF15の記事で、FF15はFFシリーズ論として赤点、みたいなことを書きましたが、今作の戦闘に関してはギリギリ合格点ではあるものの、予想を少しも超えてはこなかったという印象です。
それと敵のHPがテイクダウン前提の量(FF13みたいな感じ)なので、雑魚が固く、加えてウィルゲージを削るのに効率的なアプローチが限定的でかなり単調です。
全体的にプラチナゲームズ作品(『ニーア オートマタ』)に似た感触で、直感的な操作に優れつつ、遊びこむほど浅い部分が目立つ感じです。
ステージ
オープンワールドからエリア制へ
FF15という黒歴史を否定し、今作はエリア制になってオープンワールドを廃止しました。各エリアはシームレスにはつながっておらず、大マップから移動します。
ただFF15はオープンワールドだったから批判された訳ではなく、スカスカオープンワールドだったから批判されたのであって、正直言うとむしろ今作もオープンワールドであってほしかったです。というのもエリア制を取り入れたことでマップのデザインもかなり古臭い印象がするものになっています。そもそもエリア制になったのは何か企みがあった訳ではなく、FF15がオープンワールドで失敗してもう懲りたから挑戦を諦めた以上の意図はありません。『ゼノブレイド』シリーズ(1{DE}.クロス.2.3)のように、エリア制でもさながらオープンワールド並の自由で豊かな探索があるのかと思っていましたが、とんでもなかったです。
オープンワールド信仰?
「オープンワールド信仰」といってやたらオープンワールドを有難る潮流を揶揄する制作側のコメントがありましたが、「オープンワールド」ジャンルの内包的定義を「3D空間がおよそシームレスにつながったマップデザイン。プレイヤーがエリア攻略の手順をデザインする際のアプローチやバリエーションが豊富に想定されている設計」とするならば、その空間デザインがダイレクトにプレイヤーの遊びの自由度、戦略性の発揮の余地に直結するという点で、今後そうしたゲーム空間のデザインがアドベンチャーゲーム、RPGといった不確実要素、隠し情報の探索を志向するジャンルにおいて主流になっていくのは是非もなきことと思います。実際、7リバースもオープンワールドに挑戦し、一定の戦果を上げてくれました。
モブハントシステムは今作も健在で、ボリュームも質も申し分ないです。ただ全体的にクエストも探索もお使い要素マシマシで古臭いです。
世評が振るわない理由
本作品は流石に佳作で面白い作品なんですが、世間の評判が著しくない理由も理解します。まずこのゲームはフィクション部分のデザインにしてもゲームメカニクスのデザインにしても革新性や驚きに乏しいです。FFシリーズは、6,7あたりから特に圧倒的な技術力と予算、革新性を事前に広告して、FF13シリーズ(1.2.3)以降は毎度羊頭狗肉がバレて炎上、みたいな流れが様式美と化していましたが、つまるところFFというIPにはみんな新鮮な驚きと革新的な挑戦、圧倒的で斬新なゲームフィクションのデザインを期待して食いついてくれていた訳です。本作にはそうした部分があんまりなくて、FF15が大振りの内野フライだったから、とにかく送りバントで塁に出ようという気持ちが伝わってきます。けれどもそれは特大ホームランが見たかったシリーズファンのニーズに応え切れていません。
また挑戦はもちろんあるものの中途半端というか、アクションに振り切った訳だから何か妙案があるのかと思いきや、ベタに7リメイクやLRをアクションにしました、みたいなデザインです。そしてFFという伝統への批評性やコミットメントも中途半端です。これだったらクライシスコア(リユニオン)やオリジン、零式(HD)のようなスピンオフでも良かったんじゃないかという感じで、胸を張ってナンバリングタイトルとしての看板を背負える内容ではないです。
総評
佳作だが、FFに期待する革新性がない
本作はテイルズやイースのようなPS2,PS3時代の古き良きアクションRPGを無難に手堅く作った感じで、総合点としては『テイルズ オブ アライズ』と同点くらいで減点要素は少ないものの、華がなくパッとしないのも事実です。またこのようなコンセプトが、伝統を踏まえた上での革新性を売りにしてきたFFブランドのありかたとして正しいのか、シリーズユーザーのニーズへ応えられているのかも疑問です。FF13シリーズ(1.2.3)、15で順調にシガイ化しつつあったFFブランドの名誉挽回に成功しきったとも言い難いです。
FF15の方が本作より面白いとは全然思わないですが、少なくともFF15は蓋を開けるまでのドキドキはありました(たらればですが、野村さんが15を完成させていたら16より評価は高かったでしょう)。しかし本作は事前情報から蓋を開ける前の興奮もなく、そしてそんなに上がっていない期待値をほんの少し下回る内容でした。なのでやっぱ辛い作品だと思います。『テイルズ オブ アライズ』と総合点では同点と書きましたが、アライズがテイルズシリーズ論として一級のアンサーであるのに対し、本作はFF論として二級、三級のアンサーです。その辺りの印象としては『バイオハザード5』とかと近いです。
FFは偉いという誇大妄想を抱いて片翼の翼に乗って墜落していったのがFF15とするなら、FF16からは「俺、FF16にはなりきれませんでした。プレイヤーさん……いつかどこかで、本当のFFくんに会えるといいですね」という、自分を見失った困惑の悲鳴が聞こえてくる気がします。あるべき自分を見つめ直して取り戻し、確かな決意のもと前へと進もうとする勇姿を、是非とも FF17では見たいと思っています。
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