始めに
始めに
『Road96』についてレビューを書いていきます。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
9 | 7 | 3 | 6 | 7 | 3 | 優(35) |
- 独創的なゲームデザイン
- 自由度の高さ
- 分岐が少ない
ゲームフィクションについて
あらすじ
主人公は独裁国家「ペトリア」に暮らす行方不明の若者。プレイヤーは、そんなひとりの若者となり、この国を正すため、あるいは逃れるために、ヒッチハイクやバス、タクシー、徒歩などの移動手段を用いて、国境を目指し、脱出を図ります。
ランダムネスが演出するインタラクティブなロードムービー
本作品はロードムービーのゲーム版ということになっています。ロードムービーというジャンルは、代表格はヴィム=ヴェンダース監督作品(『パリ、テキサス』)などと言われ、その様式のルーツは英雄の流浪譚ともされています。実際のところ、ロードムービーの直接的な源流となったのはバロウズ、ギンズバーグ、ケルアックなどビートニックの作家でしたが、彼らはモダニズムに括られる作家で、ケルアックにはトマス=ウルフの新古典主義的モダニズムからの影響が顕著でした。ケルアック『路上』は、旅をテーマにする内容で、自らを存在を神話の象徴体型の中で捉えようとするウルフの手法を強く受けつつ、旅というテーマを展開しています。ケルアックやヴェンダースの作品において、旅とは自分を発見し、真の自由を獲得するためのツールです。
本作における旅も、独裁国家からの脱出という形での、真の自由を追求する冒険になっています。プレイヤーは自身の分身、鏡像であるプレイヤーキャラクターを操作して、作品の主人公である七人と出会い、彼らのイベントを回収していきます。発生する内容に関してはランダムになっているので、それが旅というものの驚きと発見を演出してくれます。
運命の日
本作のエンディングは2つに分岐します。本作には革命、投票、自由という、プレイヤーの行動に応じて変化するパラメーターがあり、革命が一番高いとバッドエンド風ルート、投票、自由が一番高いとグッドエンドぽいルートに行き着きます。
真の自由が民主主義と自由主義によって確立されます。
ゲームメカニクスについて
リソース管理(体力、金)、ナラティブチョイス、アビリティ
本作品はリソース管理がメインとなる作品です。体力、金を適切に管理しながらヒッチハイク、徒歩など移動手段を選んでいきます。金がないとナラティブチョイスで選べない選択があります。またナラティブチョイスによって革命、自由、投票のパラメーターが上昇し、ルート分岐します。何人かのプレイヤーキャラクターで脱出や逮捕、死亡といった結末を迎えたのち、運命のエンディングを迎えます。印象として『グノーシア』などと近いかもしれません。何度も同じゲームを繰り返しつつ、その合間に主人公たちのイベントを回収していきます。
主人公の7人などとプレイヤーは道中で交流していきますが、その中でアビリティを獲得でき、有利な効果を得られます。
分岐の物足りなさ
本作は分岐が物足りないです。「革命」「投票」「自由」の選択肢の中でどのスコアが1番高いかでエンディングが分岐します。投票か自由のルートががトゥルーエンドになっていて、革命はバッドルートみたいな感じです。
ちょっと分岐は少なすぎるし、テーマとしての掘り下げも弱いです。