セガは燃えているか。『戦場のヴァルキュリア』レビュー

セガ
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始めに

始めに

 SRPGの革命児『戦場のヴァルキリア』についてレビューを書いていきます。

独創性完成度快適さボリュームフィクションその他判定
993882優(39)

ゲームフィクションについて

あらすじ

 征暦1935年。専制国・東ヨーロッパ帝国連合と共和制連邦国家・大西洋連邦機構の間で始まった第二次ヨーロッパ戦争は、帝国と連邦に挟まれた緩衝国・ガリア公国へ飛び火します。帝国は鉱物資源「ラグナイト」を豊富に産出するガリア公国へ侵攻。

 ガリア公国に住む大学生ウェルキン・ギュンターは、故郷ブルールに帰郷した際、自警団をしている町娘アリシア・メルキオットと出会います。そして彼らは自らも戦争へ参加することになります。ウェルキンは義勇軍第3中隊第7小隊長に就任、亡父が遺した戦車・エーデルワイス号を駆り、祖国を守る戦いへと臨みます。

「CANVAS」システムがつづる戦争絵巻

 本作品を特徴づけるのは、CANVASシステムによる美しいグラフィックです。3DCGに水彩画のような効果を与えることで、独特の温かみのある世界観を描いています。『大神』[絶景版]などを連想しました。

 グラフィックは素晴らしい一方、シナリオは架空戦記ものとしては最低クラスのコテコテで陳腐な内容です。あと途中でヴァルキリア人というSF風の設定が出てきて超能力を用いて砲弾も耐えるため、全体的にとっ散らかった印象です。ただキャラクターは魅力的です。

ゲームメカニクスについて

BLiTZシステム

 戦闘が始まると、「コマンドモード」でマップから操作するユニットを選択します。ユニットを選択する際は「CP」を消費、CPはターン開始時に補充され、余った状態でターンを終了すると次のターンに持ち越せます。
 ユニットを選択すると「アクションモード」に移行し、3Dのフィールド上を移動できるものの、移動するに従い「AP」ゲージが消費され、なくなると移動不可になります。CPがある限り同じユニットを何回でも動かせますが、同一ターン中に複数回ユニットを動かす場合は、2回目以降はAPゲージがある程度減った状態から移動開始します。偵察兵・突撃兵・戦車は、近くを移動する(アクションモードにいる)敵兵を自動で攻撃します。
 アクションモード中にR1で「ターゲットモード」に移行しTPS視点になり、敵を攻撃できます。ターゲットモードの間は敵の攻撃は止まるので、エイムは要求されません。攻撃後は敵の射程内だと反撃を受けます。

 総評としては、SRPGにおいて「移動」の要素をアクションにした感じです。『Fallout』シリーズ(1.2.3.4)のようにターン制オーダーにアクション制を加えたのが画期的でした。

ゲームとしての完成度とバランス面における課題、シリーズの受難

 この作品はオンタイムで触れた時は非常に感動しましたし、SRPGジャンルの革命と思いましたが、まだ一作目なので全体的に作り込みが荒く、ゲームバランスが悪かったのでした。一部のユニットがバランスブレイカーすぎること、如何せん敵の配置(伏兵)を覚えると容易になり詰将棋のようなステージデザインであって縛りでもしないとSランクをとったステージは開拓しようがないこと、オンライン対戦などがない故の戦略面での物足りなさなど、数々の問題点を孕んだ一作目だっただけに、今後どのようなテコ入れがなされてシリーズ(1.2.3.4)が発展していくのかと興奮しました。

 が。シリーズは順調な発展を辿ったとは言えず、携帯機に移って全体的に微妙に劣化した2、また携帯機でゲームリソースの使い回しと雑な難易度増加の3、ようやく据え置きに戻って1のマイナーチェンジに収まった4と、全体的に停滞して行ってしまったシリーズでした。2、3はナンバリングでなくスピンオフでやってほしかった内容です。

 正直、SEGAというメーカーが既に龍が如くスタジオを除くと開発力を完全に喪失しコンマイ化しつつあった兆しを感じさせるシリーズの顛末で、なんとも言えない気持ちになったものです。

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