始めに
『DARK SOULS II SCHOLAR OF THE FIRST SIN』レビューを書いていきます。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
7 | 6 | 3 | 9 | 7 | 1 | 良(33) |
- ステージのボリューム
- 黒歴史要素が多すぎる
- 全体的に小さな減点が多すぎる
- ステージが意地悪
ゲームフィクションについて
あらすじ
かつて古代の時代に発現した「はじまりの火」の力が弱まり、それに呼応するように、幾つもの国が興り、幾人もの王が生まれては滅亡していきました。
その最中、ヴァンクラッドという男がひとつの国を興します。ドラングレイグの王ヴァンクラッドは、「はじまりの火」から「ソウル」と呼ばれる力を見出し、竜騎兵と各地を征服します。
ヴァンクラッドの力が大きくなるほど、不死者の刻印「ダークリング」を発現する人間が増えました。不死者は幾度となく死を繰り返すことで記憶が曖昧になり、やがて見境なく人を襲う「亡者」へと変貌を遂げます。不死者に頭を悩ませた王は、王妃デュナシャンドラの助言を得て、巨人の国へと侵攻。人がやがて不死者になる因果を断ち切るべく、巨人の国から「何か」を奪います。
しかし復讐に駆られた巨人たちの勢いはとどまることを知らず、ドラングレイグを徐々に滅ぼします。心が折れた王は自らを王城の奥に閉じ込め、何もかもから目を背けます。それから、ドラングレイグが亡国と呼ばれるほどに永い時間が経ちます。
3人の老婆に諭されるまま、一人の不死者(主人公)が辿り着いたのは「終わった地」とされるマデューラ。その地にある小さな篝火の前に緑衣の巡礼服を着た女性がひとり佇んでいました。
『金枝篇』の影響。火の神話(プロメテウス、スルト)、太陽の神話、人間の起源
『ダークソウル』シリーズ(1.2.3)の2作目である本作品も前作と世界観を共有し、時系列的に後の出来事を描きます。さまざまな神話のエッセンスを取り入れた作品になってますが、本作品は特にフレイザー『金枝篇』からの影響が顕著です。フレイザー『金枝篇』といえば、ネミの森の司祭殺しの儀式の風習に関して、比較神話学、文化人類学的考察を進め、その実践の背後にある合理性、合理性に基づく慣習のデザインに対して合理的解釈を考えたものです。要約すると、ネミの森の司祭殺しは自然の生命の転生サイクル、生命の活力の維持のために、前任者である森の司祭の力が損なわれる前に次の王に誰かが成り代わる必要があるから、という発想からそのような儀礼が形成されたとの解釈がなされています。
ゴシック小説。コンラッド『闇の奥』、T=S=エリオット『荒地』
フレイザー『金枝篇』はまた、モダニズム文学に影響したことで知られています。例えばT=S=エリオットは、コンラッド『闇の奥』の非線形の語りに影響を受けつつ、『金枝篇』をベースに独特の非線形の語り口を構想しました。コンラッドの『闇の奥』では、作中に登場するさまざまなエージェントの視点や語りを通じて、断片的に特定の対象について記述され、読者はそれについて解釈を与えていきます。
同様に本作品はプレイヤーの鏡像、身体的延長たる不死人を操作して、焦点化されるプレイヤーキャラクターの視点から物語世界内の断片的情報を収集し、それに解釈を与えていきます。
説明不足
とはいえ本作は極端に説明不足です。テキストと実際のゲーム内容が一致していなかったり(リマスターで改善)考察リソースが少なすぎて、世界観のデザインがいい加減です。
本作は一事が万事こんな感じで、致命的な欠陥は一応少ないものの、マイナス1点になる要素があまりにも多いです。全体的に投げやりな調整が目立ちます。
ゲームメカニクスについて
ステージ、エネミーデザイン
本作は全体的に調整が適当です。ステージのデザイン自体も適当ですが、ボスも複数ボス(しかも獅子猿2体みたいな調整されたものではなく、モーション流用しただけの)が多かったり、弱点がなかったり(特別有効なデッキビルドがなく、モーション覚えて攻撃するしかない)で、立ち回りが単調にならざるを得ません。
ステージも難しいというより毒液が飛んできたり水が張られたりしていて移動しにくいとか、時間制限があるとか、運要素があるとか、全体的に面倒でイライラするデザインが多いです。『ロックマンX6』を連想します。これに基本的なモーションの劣化が相まって終始イライラします。
基本アクションの劣化
本作は通常攻撃以外のモーションが劣化しているため、プレイヤーが弱いです。とにかく隙が生まれやすく被弾しやすいです。またパリィとバックスタブが劣化してほぼ使い所がないです。パリィはタイミングがシビアすぎます。バックスタブは対人で完全に無効にできる装備が現れました。
それと重量に応じて線形にスタミナ回復が鈍化するという仕様になったため、重装が産廃になりました。これは本作への批判で一番挙げられやすい要素です。
デッキビルド
本作はデッキビルドのバランスが世紀末です。
重装が産廃化している、属性攻撃が強すぎる、刀が強すぎる、奇術師のコートや奇手の指輪や石の指輪などの壊れ装備の数々によって、かなりビルドの強弱がはっきりしており、プレイヤーのアプローチが減っています。
『ダークソウル』シリーズ(1.2.3)になって『デモンズソウル』からビルドのバリエーションが大幅に増えてビルドゲーとなってきていたところだったので勿体無いです。
総評
素材の良さを殺す調整
ボリュームとか評価点もありますが、全体的に調整に失敗してます。
関連作品、関連おすすめ作品
・『スター・ウォーズ ジェダイ:フォールン・オーダー』『Wo Long: Fallen Dynasty(ウォーロン フォールン ダイナスティ)』『Sifu』『ウォーロン』『Lies of P』パリィ主体のソウルライク