始めに
『ベヨネッタ3』レビューを書いていきます。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
7 | 6 | 4 | 6 | 6 | 4 | 良判定(33) |
やや厳しくした採点です
- 基本アクションは優れている
- シリーズの停滞を感じる
- 一周に特化した内容
- ストーリーがひどい
ゲームフィクション
あらすじ
舞台は別次元の地球、廃墟となったニューヨーク。ベヨネッタは謎の存在シンギュラリティが呼び出したホムンクルスと戦っていました。しかしシンギュラリティにとらわれます。謎の少女ヴィオラとシグルズがベヨネッタを助けようとするもののベヨネッタとシグルズは殺され、ヴィオラは何処かへと転送されます。
舞台は正史世界のニューヨーク。ベヨネッタは情報屋のエンツォと豪華客船のパーティーに参加していたものの、エンツォの車の上にヴィオラが落ちてきて、彼女を追ってホムンクルス達も現れます。
相変わらず魅力的なキャラクターと演出だが…
DMCシリーズ(1.2.3.4.5)の生みの親である神谷英樹が関わっているのもあり、チャンドラー『長いお別れ』などのノワール、ジョン=ウー(『フェイス/オフ』)やツイ=ハークといった香港ノワール、クウェンティン=タランティーノ映画(『パルプ=フィクション』『キル=ビル』シリーズ[1.2])、平野耕太、広江礼威のアクション漫画のようなキザなセリフ回しと誇張的でアクションのケレンで魅せてくれる演出は健在です。キャラクターも主人公のベヨネッタを始め、いずれも魅力的です。
しかし本作はシリーズ(1.2.3)の問題点が悪化してきた印象です。
とにかく大味で食傷気味。シナリオも劣化
シリーズ(1.2.3)の2はギャグからシリアスに舵を切りつつも、卓越したプロットで魅力的なストーリーでした。
本作は2と近いシリアス路線ですが、シナリオが大幅に劣化しました。単純に分かりにくいのでベタな盛り上がりがないのと、並行世界を救うというプロットのために似たようなシチュエーションばっかりになります。負けイベみたいな流ればっかりでベヨネッタの株がひたすら落ちていきます。2のストーリーが優れていたから期待しすぎたのもありますが、それを抜きにしてもベヨネッタの扱いが酷いです。
シリーズ(1.2.3)の演出もマンネリ気味です。マシンスペックとも不整合です。
ゲームメカニクス
新システムによりバランスが悪化
デーモン=スレイブというシステムが追加されました。魔力を消費し魔獣の中から1体を選択して召喚し、広範囲かつ高火力な攻撃ができます。発動中ベヨネッタは無防備状態となります。
この新システムが曲者で、無双OROCHI3(Ul)と近いですが、新アクションをプッシュしすぎていてかつそれが旧アクションの魅力とあまり調和できていません。とにかくこのデーモン=スレイブは強いですが、スピーディーな避けゲーたる『ベヨネッタ』シリーズ(1.2.3)の魅力と齟齬(使用中は回避できない。とはいえ、回避後にデーモン=スレイブを使える)をきたしており、おまけにステージもこの新システム前提で大味な作り(やたら敵が多くて固い)になっています。2もウィッチタイムが短くて高難易度だと使いづらくなっていてそのあたり不評でしたが、本作もウィッチタイムの使える状況を減らしました。
2のUCも本作のデーモン=スレイブもそうなのですが、ウィッチタイムというシリーズのメイン要素を引き立てるファクターになっておらず、別の要素がくっついている印象です。
このシリーズ(1.2.3)はシリーズが進むたびに基本アクションの調整が大味になってきている印象で、一周楽しんだら売ってしまう人なら満足するでしょうが、そうでない人は周回するとテンポ悪いし、ちょっとうんざりするつくりです。
一周目で飽きる別ゲー要素
本作も途中で別ゲーになる部分があります。『ロックマンX8』に近く、一発芸みたいなギミックのミニゲームステージが多くて、周回するとノイズになります。しかもそれぞれのゲームとしてのクオリティが低いです。FF16の召喚獣合戦くらいうんざりします。
これは本作だけでなくこのシリーズ(1.2.3)共通の特性で段々マシにはなっている印象ですが、やはり辛いです。
プレイアブルユニットとしてもキャラクターとしても魅力のないヴィオラ
ヴィオラは全体的に癖が強く、しかもベヨネッタに勝る部分も少ないので、遊んでいて退屈です。
ウィッチタイムの発動方法が回避ではなくガードでミスしやすい、回避の無敵時間が短い(アプデで修正)、火力も低い、武器も少ないと、プレイアブルキャラクターとしての魅力に乏しいです。
シリーズはどこへ向かうのか
このシリーズ(1.2.3)の一作目が受けたのは、DMCシリーズ(1.2.3.4.5)と違って回避アクションのタイミングさえ覚えればあとはなんとかなり、しかもスタイリッシュな戦闘をガチャプレイでも展開できるという部分でした。本作ではその避けゲーのコンセプトがやや損なわれた上、スタイリッシュな戦闘、演出の部分においてハードの制約に拘束されて発展が乏しくて閉塞感を感じさせます。
DMCシリーズ(1.2.3.4.5)もシリーズが進むごとに操作が煩雑になり初心者にはついていけなくなっていくという課題を抱えていましたが、本シリーズもいよいよ壁にぶち当たっている印象です。個人的には、プラチナゲームズでは『アストラルチェイン』の方がDMCシリーズ(1.2.3.4.5)に似た手数の豊富なアクションとカジュアルさを両立させていて、もっと可能性を感じてます。
総評
一応良作だがシリーズの先行きへの不安を感じる作品
一応は良作でありつつ、シリーズの今後への不安やマンネリを強く感じさせる内容でした。ハードの制約もあるので、このシリーズの演出の発展に強く限界を感じます。
個人的に『ファークライ』シリーズ(1.2.3.4.5.6.pr.nd)は、口当たりの良い大容量のカップ焼きそばみたいなもので、最初は美味しいけど後半うんざりすると思ってるんですが、『ベヨネッタ』シリーズ(1.2.3)を料理に例えると、激辛メニューみたいな感じで刺激や癖の強い味でこっちの舌が誤魔化されて食べられるだけで、よくよく味わうと全体的に実はテキトーな内容、みたいな感じです。
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・『アサシン クリード オデッセイ』『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』『ゼルダ無双 厄災の黙示録』:ウィッチタイムのフォロワー
・『Hi-Fi RUSH』(ハイファイラッシュ):避けゲー。