始めに
『ファイアーエムブレム エンゲージ』レビューを書いていきます。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
8 | 7 | 4 | 7 | 6 | 1 | 良(33) |
- 癖は強いが独創的で完成度の高い戦闘
- 企画として滑っていて古参も新参も捉えられていない
- 調整不足なところも多い
- シナリオが寒いしひどい
ゲームフィクション
あらすじ
竜と人間が生きる地「エレオス大陸」。
千年前、「邪竜」との戦争が起こり、人々は異界の英雄「紋章士(エムブレム)」の力により邪竜を封印します。
やがて封印の力は弱まると、主人公は千年の眠りから目覚めます。主人公は、かつて共闘した紋章士の宿る12個の指輪を求めます。
お祭りゲーで『幻影異聞録♯FE』に似た内容
本作はFE無双などのようなお祭りゲーで、過去作のキャラクターがエンゲージという要素によってシステム、物語の中で、ジョジョシリーズ(1.2.3.4.5.6.7.8)のスタンドみたいに召喚されます。
このあたりの設定は外伝作品である『幻影異聞録♯FE』(En)の要素を輸入してきた感じです。
全体的にまた暗黒期に入りつつある感じ
このシリーズは、wiiにハードが移ったあたりから長らく迷走してきました。迷走の傾向としては覚醒、ifに顕著なんですが、萌えとか深夜アニメっぽいテイストで新規層の獲得を図るものの全体的に滑っており、システムも基本的には高水準でありつつもクセが強くややアンバランスで古参ユーザーもじわじわ離れている感じでした。
もともとFEシリーズはゲーム性もフィクション面も割と古典的で優等生的だった一方、後続にSRPGでゲーム性、ストーリー性で個性的な内容のものが出てくるとその特性が曖昧なものになりつつあって、新規にとってアピールポイントの乏しいものとなっていました。
そんな中現れた風花雪月は、覚醒、ifのキャラゲー路線を継承しつつその徹底的にディテールを緻密に積み上げ、従来の架空戦記もののジャンルの中でそれを展開することで戦争の残酷さを演出するというデザインで新規と古参の心を鷲掴みにしました。ゲームとしてもペルソナシリーズ(3[P].4[G].5[R])ライクのRPGと恋愛シュミレーション、育成シミュレーションのハイブリッドジャンルで、アドベンチャーパートでリソースを適切に配分しつつSRPGに臨むという画期的なデザインでした。
古参ファンはこれで暗黒時代が終わったものと安心し、FE無双、風花雪月無双に触れてさらにその確信を強めていたところ、本作でそれに疑いが起こりました。
全体的に暗黒期の覚醒、ifに戻りつつある感じです。
ストーリーがとにかくクソ
よく言われますが本作はとにかくストーリーがクソです。寒いコテコテの深夜アニメみたいなノリでうんざりする内容です。
ストーリーがつまらなくてもアクションとかそれがノイズにならないゲームジャンルならいいのですが、このシリーズは伝統的にストーリーパートのテクストやムービーと戦闘から構成されていて、探索やアクション要素も希薄で一本道のストーリーの合間に戦闘が挟まる感じなのでストーリーの悪さは結構大きい欠陥です。
ゲームメカニクス
戦闘
エンゲージ
ユニットは「紋章士の指輪/腕輪」を装備できます。装備したユニットは常時「シンクロ」状態となり、ステータスが上昇、シンクロスキルを使えます。
また指輪を装備したユニットは、「エンゲージ」コマンドでエンゲージ状態となります。エンゲージ状態ではシンクロ状態に加え、エンゲージスキル(シンクロスキルより強力なスキル)、エンゲージ武器(紋章士ごとに固有の武器)、エンゲージ技(一度のエンゲージ中に一回だけ使える必殺技)、スタイルボーナス(戦闘スタイルによる追加効果)などの恩恵があります。
このエンゲージのリソース管理により戦略性が高いです。
ブレイクとスマッシュ
相性有利な武器で攻撃すると相手を「ブレイク」できます。ブレイクされたユニットは、その戦闘と次の戦闘が終了するまで武器をなくし、反撃できなくなります。相性は、従来通り剣→斧→槍のじゃんけんと、「体術」が「弓・魔法・短剣」などの遠距離武器に有利です。
他方、武器相性は命中率、ダメージの補正に影響しなくなりました。
また一部の武器で攻撃すると「スマッシュ」が発生、相手を1マス後退させます。これによって別のユニットや壁などの地形に接触させると、ブレイク状態にさせられます。
スマッシュを起こせる武器は後攻が確定で、追撃もありません。
デッキビルド
武器、武器種
新武器の体術は風花雪月の籠手のような格闘攻撃です。短剣も久しぶりに復活しました。
キャラ毎の武器レベルはなくなり、クラス毎に武器レベルが設定され、レベルアップもしません。キャラごとには「天性素質」という得意武器が設定されています。
ユニットの体格が『暁の女神』以来に久々の復活。武器の重さが体格を上回ると、攻速が下がります。
武器に耐久値はなく壊れることはありません。
スキルなど
兵種ごとに「戦闘スタイル」があり、それに応じた効果を常時得られます。シンクロスキルやエンゲージ技でスタイルボーナスを得られるものもあります。
個人スキルはユニットごとに保持しているスキルです。風花雪月などと同じです。
兵種スキルは上級職レベル5や特殊職レベル25で取得します。兵種ごとに異なります。
継承スキルは紋章士から継承するもので、ユニットごとに2つセットできます。
育成の内容
指輪/腕輪を付けて戦闘などをすると、ユニットと紋章士の絆レベルが上昇。シンクロスキルやエンゲージ武器が解放され、ステータスも上昇します。
風花雪月の資格試験が撤廃され、下級から上級にクラスチェンジする風に戻りました。『覚醒』と共通です。
クラスチェンジには対応する武器種の素質が必要です。
育成バランスの悪さ
デッキビルドも自由度が高く楽しいです。
ただ中盤以降に加入する上級職ユニットの、ステータスの初期値が高いので、主人公など強ユニット以外は入れ替えたほうが効率がいいです。本作はユニット格差が酷く、このせいでバランスが悪いです。
それと遭遇戦の敵が自軍の戦力に依存して強くなるため、低いレベルのユニットの強化が大変です。
アドベンチャー
ワールドマップ
一つのマップを終えるたび「ワールドマップ」に移り、次に進む場所を選択します。本編のほか、外伝や遭遇戦、拠点「ソラネル」での準備ができます。だいたいいつもどおりです。
外伝はいつでも挑戦できる戦闘。本編の進行に応じて自動で出現します。
遭遇戦はリアルタイムの経過に伴い、マップ上にランダムで発生する戦闘です。
戦闘後の散策
『外伝』、『Echose』のように、戦闘に勝利すると、マップを探索できます。ユニットがマップ上にいて、会話後には「絆のかけら」が貰えることがあります。
総評
トライエース作品みたいな尖った感じの作品
ifとか覚醒もそうだったんですが、もっぱらフィクション周りのデザインが悪くて、他方でゲームとしてはやや難解で煩雑で若干バランスは悪いものの灰汁の強い尖った魅力がある感じで、トライエース作品に感じる印象と近いです。ただこうしたデザインがシリーズの古参に受けるのかわからないですし、新規ライトユーザーにウケるのかも疑問です。
ifとか覚醒に感じた、どの層にもマーケティングのターゲットに捉えられていなくて企画として滑っている感じが復活しました。