良ゲー。『デトロイト ビカム ヒューマン』レビュー

ソニー
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始めに

始めに

今日は『デトロイト ビカム ヒューマン』レビューを書いていきます。

独創性完成度快適さボリュームフィクションその他判定
87477優(35)

ゲームフィクションについて

あらすじ

 2038年、AI技術の発達により、アンドロイド産業で栄えたアメリカ・デトロイトが舞台です。

 サイバーライフ社が人間そっくりのアンドロイドを開発・流通させたことで、人間に可能な作業の多くをアンドロイドが肩代わりし、経済発展の一方で失業率は増大しています。アンドロイドの中には、自我を持つかのような「変異体 」と呼ばれる個体も現れます。

 変異体が初めて人命を奪った事件現場に、主人公の一人、最新鋭の捜査補佐アンドロイドであるコナーが派遣されます。変異体は現場の家庭で所有されるアンドロイドで、一家の父親を殺害した後、娘を人質に屋上に立てこもりました。コナーは人質を救助するために交渉人として対応しようとしています。

インタラクティブなアドベンチャーの到達点

 我々老害ゲーマーは『かまいたちの夜』シリーズ、『街』などといったサウンドノベルの名作を消化しつつ、「いつか映画もこんなふうにプレイヤーの介入でデザインできるメディアになるのではないだろうか」という妄想を抱いてきました。本作は幼い私のそんな妄想の代理人のような作品になっています。

 ナラティブチョイスによるセリフの選択で無数の分岐を辿っていく本作のドラマは、それがプレイヤーの選択によるものだということが一層物語のカタルシスを引き立ててくれます

人造人間の苦悩のドラマ。3体(コナー、カーラ、マーカス)のオムニバス

 本作品は映画『ブレードランナー』(原作:フィリップ=K=ディック)以降特によくあるポストコロニアルな主題を、M=シェリー『フランケンシュタイン』のようなアンドロイドの自己の存在論(実存)的な苦悩と結びつける内容で、イシグロ『わたしを離さないで』なども同様の構造を持っています。

 それでやっぱり本作はシナリオや設定のデザインに関しては非常にベタです。インタラクティブ性によって物語に厚みがもたらされているし、キャラクターに関しては繊細なグラフィックによる描写によって魅力的に描かれていますが、それにしても平凡です。

一部モヤモヤした展開

 グッドエンド(というか全員生存エンド)の条件にアイテムをネコババしてなんの罪もない人を欺かなくてはいけないようになっていて、何のためにこんな後味悪いことをさせるのかよくわかりません。

 あとアリスの正体など、サプライズが不発気味です。

ゲームメカニクスについて

インタラクティブ性(ナラティブチョイス、QTE、探索)

 本作のインタラクティブ性の前提となっているのは、ナラティブチョイスによる適切な会話パターンの選択と、QTEによるアクションの成否です。QTEは頻度の多さ、難易度の高さ、判定のシビアさがストレスです。また早送りができないことも、QTEの煩わしさとリプレイ性の低下をもたらしています。QTEはもっと減らしてナラティブチョイス(時間制限もあまりなくていい)による分岐を増やしてほしいです。

コナーによるアドベンチャーパートでは、『SIREN』シリーズ(1.2.3)や『サイバーパンク2077』のような、特定のNPCの視覚情報にアクセスして、適切な行動を推論させる要素があり、なかなか楽しいです。

分岐のデザイン

 大雑把な分岐としてコナー、マーカスが2通り、カーラに3通り、グッド/バッド(生存したり死亡したり)エンディングがあり、道中のナラティブチョイスの成否などの分岐によって、細かいシーンの内容が分岐していく感じになっています。

 この分岐なんですが、結構グッド/バッド(成功/失敗)のベクトルが明確にデザインされていて、かつ細かい部分は違っていても、概ね似たいくつかの展開を辿ることになります。まあ仕方ないのでしょうが、個人的には正直、グッド/バッドのベクトルを離れてニュートラルに、プレイヤーの行動の帰結によってさまざまな正解と言えるようなゴールに辿り着きたかったです。『バルダーズ=ゲート3』はその辺りの希望に応えてくれました。

 このグッド/バッドのベクトルがデザインされているため、全員生存エンディングがトゥルーエンドのように映って、それだと無数のインタラクティブなエンディングの価値が薄れる気持ちがして、なんかそれは違うな、と思います。

総評

インタラクティブ性は面白いが

 インタラクティブなプレイヤーの介入については面白く、分岐も豊富ですが、一方でQTEが多すぎて前時代的なデザインです。QTEに依存せず、リプレイ性の強いゲーム性を取り入れてほしかったところです。

関連作品、関連おすすめ作品

・『マスエフェクト』シリーズ(1.2.3)、『バルダーズ=ゲート3』:インタラクティブ性の強いストーリー

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