始めに
始めに
今日は『ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団』についてレビューを書いていきます。地下迷宮シリーズ(1.2)の1です。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
8 | 7 | 4 | 7 | 7 | 2 | 優(35) |
- 探索に関しては革命的なギミックでジャンルを刷新
- ストーリーも魅力的
- 全体的に調整不足
- 深夜アニメの寒いノリ
ゲームフィクションについて
あらすじ
ルフラン市に魔女ドロニアとその弟子ルカがやってきます。 その目的はその地を治める領主代行の依頼による地下迷宮の探索です。地下迷宮はただ一人を除きその地から帰還したことのない人類未踏の地。 人間には毒になる濃いマナと地下迷宮に潜むモンスターにより人間ではたちまちに命を落としてします。そこでドロニアは攻略の為に妖路歴程(ようろれきてい)とそれが指揮する人形を使います…。

規制の盲点を突くどぎついテクストによる描写
パワポケシリーズがいい例ですが、CEROによる表現規制は映像に対するものが中心でテクストに対しては緩いので、その盲点を突く形で日本一ソフトウェアの作品はしばしば陰惨な暴力や性表現を作品に散りばめつつ、ランクBやCの扱いで済んでいました。
本作も同様にえげつない暴力や下ネタをテクストで徹底的に展開するため好みは分かれそうです。深夜アニメとかとん○○○のお笑いみたいなノリで、徹底的に人をセクハラや暴力、嫌がらせでいじめ抜いて笑いをとるみたいな展開が多いです。
ストーリーは面白くても演出は貧相
本作はストーリーに関してはよく伏線や設定を練り込んでデザインしているとは思いますが、進行がテクストと音声ベースなので立ち絵があるくらいなので、ゲームの演出としては質素な作りでライトノベルを読んでいる感じです。また攻略するためのダンジョンもウィザードリィタイプの一人称マップなので、変わり映えしない風景がずっと続いて退屈です。
ゲームメカニクスについて
不確実要素探索。ウィザードリィへの挑戦状となる革命的なシステム
日本一ソフトウェアのゲームは結構一発芸みたいな作品が多くて内容にはムラがありますが、本作はウィザードリィタイプの一人称視点ダンジョンに革命を起こしそうなくらい斬新で魅力的なアイディアに満ちています。
本作にはリインフォースポイントというのがあり、これを消費してフィールド探索中に特殊なアクションを起こすことができます(LR、TOAとかと近い、戦闘と探索の共通リソース)。それが例えば壁破壊で、壁を壊して(ダンジョンから出ると元に戻る)地形を変形させつつ、自由な探索が可能になっています。『世界樹の迷宮』シリーズに代表される一人称視点のウィザードリィ式ダンジョンでは、探索時間が地形に依存し手間ですが、これによってプレイヤーの自由な裁量でダンジョンを探索できます。あとはワープポイントを設置できたり、とにかく従来のwizダンジョンの攻略をスピーディかつ自由にさせてくれる要素がてんこ盛りです。
『Dead Cells』にも似て、本作がジャンルに対して果たした資金石としての役割は途方もなく大きいでしょう。
戦闘はファセットへのワーカープレイスメントによるデッキビルド
本作の戦闘は特殊なデザインになっていて、カヴンと呼ばれる大ユニットにいくつか空きスロット(前衛/後衛スロットがあり、後衛は能力補正を与えるくらいでコマンドは出せない)があり、そこに人形兵と呼ばれるユニットをセットしてデッキをデザインします。カヴンは一回の戦闘で五個まで同時に出せるので、「魔法攻撃2.物理攻撃1.盾1.補助1」みたいなカヴンの編成が定石となります。
人形兵ユニットにはそれぞれファセットと呼ばれるクラスがあって、それぞれ固有のバリアブルアクションがあり、カヴンの意図に合わせてファセットを選んでカヴンをデザインしていきます。カヴンにはカヴン単位で発動するドナムという強力なスキルと、人形兵単位で発動するスキルがあります。
カスみたいな調整の数々、長すぎる戦闘。ユニット格差、成長要素
こう書くとカヴンや人形兵といった変項の多さからデッキビルドの楽しみが広がっているように聞こえますが、全くそんなことはありません。なぜかというと、本作は革命的な要素を補って余りあるほどの劣悪な調整に満ちているからです。まず、本作はカヴンや人形兵といった敵味方ユニットが大量にいるため、一回の戦闘が長く、スキップもできません。
それはまだギリ許すとしても、ファセット間の性能の格差が大きすぎて、デッキビルドや育成の楽しさが本当に希薄です。ピアフォートレスという盾役ファセットで構成する守備カヴンが必須なのはともかく、マージナルメイズという魔法アタッカーファセットが異常な火力で物理攻撃や耐性もそこそこというあり得ない強さになっていて、カヴン2つはドナム特化でマージナルメイズをびっしり詰め込むみたいなデザインが強力になっています。一方で物理職は不遇で、ほぼ雑魚狩りや状態異常付与専門と言っていいくらいです。
また人形兵ユニットも大量に作らなくてはならず使い捨てに近いため、ユニット一つ一つへ愛着が起こりにくいのと、とにかく面倒臭いです。面倒臭いだけでファセットの性能差が歴然としているのでデッキビルドの自由度はひくいです。
『ゼノブレイド』シリーズ(1{DE}.クロス.2.3)の3みたいな感じで、煩雑なだけで遊びの深さにつながってません。
総評
野心的な作品だが、完成度はぼちぼち
ジャンルへの試金石としては偉大ですが、とにかく戦闘とデッキビルドが調整不足です。シナリオは完成度は高いですが紙芝居で、ノリは深夜アニメできついです。
続編に期待していましたが、完全に期待はずれで、このメーカーへの過度な期待は禁物と再確認しました。