始めに
始めに
『The Last of Us Remastered』についてレビューを書いていきます。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
7 | 8 | 3 | 7 | 8 | 2 | 優(35) |
- TPSとして高い完成度
- シナリオもハイセンス、ハイクオリティ
- 独自の要素には乏しい
ゲームフィクションについて
あらすじ
アメリカのある町で、謎の寄生菌による感染症が発生します。感染は急拡大し、自我を失い凶暴化した感染者が町中に溢れ、大混乱になります。主人公ジョエルは、愛娘のサラと2人で暮らしていたが、弟トミーの助力で町からの脱出を図ります。ジョエルは軍の兵士に助けを求めるものの、兵士は2人の感染を疑う上官の指示で発砲します。ジョエルには命中せず、トミーが兵士を射殺します。ところが、サラには銃弾が当たり、そのままサラは亡くなります。
その後、寄生菌の感染症は世界中に拡大、人間社会は崩壊していき…。
ポストアポカリプスもののゾンビホラー。ロメロゾンビだが、S=キング、『ウォーキング=デッド』路線でメロドラマ風
本作品はポストアポカリプスもののゾンビホラーです。ロメロ以降の、マシスン『地球最後の男』風の吸血鬼の設定をブードゥーゾンビに転用した、感染症で増殖するタイプのゾンビです。ジョージ=A=ロメロ(『ナイト=オブ=ザ=リビングデッド』)監督のゾンビ映画はニューシネマの影響が強く、ドライでシニカルなブラックジョークを特徴としており、それがアルバート=ピュン監督『プレジャー=プラネット』、サム=ライミ監督『死霊のはらわた』シリーズ(1.2.3)、スチュワート=ゴードン監督作品や、ゲームでは『デッドライジング』シリーズ(1.2.3.4)などへと継承されます。
ロメロ以降のゾンビ作品に『バイオハザード』シリーズがありますが、あれは黒沢清監督『スウィートホーム』ゲーム版が原型で、ドイツ表現主義風のゴシックホラーになっているのに対し、本作はマシスン『地球最後の男』風のポストアポカリプスもので西部劇のような荒野が舞台です。またキング『呪われた街』(吸血鬼ホラー)のような、ウェットでリアリズムベースのメロドラマが特徴で、『ウォーキング=デッド』シリーズに特に近いです。
疑似家族のドラマ
好みの話をするとあまり好きな路線ではないんですが、それでもメロドラマとして描写がしっかりしていて魅力的な仕上がりです。娘を失ったジョエルと孤児になったエリーが絆を深めていきつつ、最後で断絶のきっかけが生まれて(2へとそれが続きます)しまうまでのプロセスが丁寧に描かれています。キャラクター一人一人の描写が丁寧で、ハードの制約の中でもそのスペックをフルに活かした圧倒的な表現がキャラクターの描写に彩りを加えます。
シリーズの二作目はオブラートに包んでいうと「人を選ぶ」、ストレートに言うとゴミクズみたいな脚本でしたが、本作は主人公二人の心理の描写がとても繊細な筆致で描かれます。
ゲームメカニクスについて
ビハインドビューのTPS、リソース管理のエコノミー要素
本作品はビハインドビューのTPSになっています。一本道ではありますが、ステージはよく作り込まれていて探索が楽しいです。本作に特徴的なのが、道中に落ちているアイテムを回収、加工して装備を補給していくエコノミー要素で、これがバイオハザードの4(RE:4).5.6などでシリーズ恒例のエコノミー要素が薄れたことに不満だったユーザーのニーズに答えてくれるような魅力を湛えています。実際、このエコノミー要素はリベレーションズ2に影響している印象です。
開発がノーティドッグなので、『アンチャーテッド』シリーズ(1.2.3.4)の、特に2以降のステルスが導入された路線をもう少し人物の挙動を現実に寄せた質感のデザインのTPSになっています。シューターとしての完成度は高いです。『トゥームレイダー』のリブート三部作(1.2.3)と近いです。
総評
全体的にハイレベルだが尖った魅力がない
全体的にハイレベルなんですが、突き抜けた魅力がありません。ソニーのゲームは傾向としてこういう良くも悪くも優等生みたいなのが多いです。
関連作品、関連おすすめ作品
・『Days Gone』『ウォーキング・デッド』(1.2)『Dying Light』シリーズ(1.2):リアリズムベースのゾンビSF。
・『バイオハザード リベレーションズ2』,サイコブレイクシリーズ(1.2)資源のエコノミー要素のあるシューター。