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『バイオショック』のテーマやコンセプトを徹底解説

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始めに

『バイオショック』のテーマを徹底解説を書いていきます。

コンテンツ

リバタリアンSFのパロディ

 この作品はヴァーホーヴェン監督『ロボコップ』『スターシップ=トゥルーパーズ』やSW4などのような、リバタリアン的な価値観を主題とする作品に対するパロディとなっています。

 ヴァーホーヴェンの作品も、リバタリアン的な価値観への異議申し立てを唱える作品でしたが、本作がパロディの対象とするのはリバタリアニズムの中心を示す「自由」「自由意志」です。本作の揶揄する対象であるリバタリアン思想家アイン=ランドにとっても、自由と自由意志に基づく労働による自己実現は主要な概念になっています。

本作における自由へのパロディー

 この作品は目的に従って行動する一本道のFPSというゲームメカニクス上の構造的特徴に、ゲームフィクションの上から合理的な説明が与えられています。また、プレイヤーの介入によってドライブされることで実現するジャックの自由な振る舞いに対して好意的に評価しているものと捉えられます。

 具体的にいうと、主人公ジャックはかつて舞台となるラプチャーで生み出された存在で、「恐縮だが」という言葉に従って命令に従うように条件付けられた実験体でした。なのでプレイヤーからすると、フラグによるお使いゲー要素は実はこのジャックの洗脳を再現するものだったということになります。

 他方でジャックをドライブするのはこの洗脳だけではなく、プレイヤー自身でもあります。なのでここでジャックはプレイヤーからの行動のコントロールから逃れられていないという解釈もできるのですが、基本的にこのゲームではプレイヤーは透明な存在であってジャックもプレイヤーの鏡像のような存在で、むしろプレイヤーのインタラクティブな介入によるアクションや利他的行動はジャックに自由な振る舞いと自己デザインの契機を与える要素であると評価できます。

レトロフューチャーとディストピア

 この作品はレトロフューチャーと呼ばれるジャンルで、『Fallout』シリーズ(1.2.3.4)などのような、アナクロニズムな世界観が特徴的です。

 またこの作品はオーウェル『1984』のような全体主義のディストピアを描く作品となっています。『1984』は、現実社会主義国家における全体主義の横行を描いたものですが、この作品はアイン=ランドの掲げる最小国家主義社会における、カルト的な暴力と恐怖による支配の蔓延を描いています。現実社会主義国家というものはもともと、共産主義社会を実現するための準備的な段階としてエンゲルス以降のマルクス主義哲学者において位置づけられてきました。マルクスにおけるユートピア思想であるところの共産主義にしてもアイン=ランド的リバタリアニズムにしても、個人の自由と労働による自己実現を志向するという点で共通し、その実現のための方策やプロセスに異同があります。けれどもその両者が同一のディストピアを形成してしまうというところに本作のパロディ作品としての意図があります

 結局、共産主義を追求する現実社会主義国家においても、リバタリアニズムを掲げる共同体にしても、それが利他と共有と個人の自由に根ざすものではない限り、容易に支配と専制による、マルクスが糾弾した資本主義社会によく似た抑圧的コミュニティを形成すると本作は示唆します。

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