始めに
『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』レビューを書いていきます。
| 独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
| 8 | 8 | 4 | 7 | 5 | 3 | 優(35) |
- システムが前作から目に見えて進化。
- 高い自由度
- シナリオが地雷気味
- ステージデザインもイマイチ
ゲームフィクション
あらすじ
「フォドラ」と呼ばれる大地。
帝国歴1180年。天涯孤独の傭兵である主人公は、「ジェラルト傭兵団」との戦いの中で所属していた「ベルラン傭兵団」を壊滅させられ、自身も傭兵「灰色の悪魔」により追い込まれます。しかし、内なる存在である「ラルヴァ」により新たな力に目覚めたことで生き延びた主人公は、ジェラルト傭兵団、そして、灰色の悪魔の打倒を志し、ラルヴァと共に旅します。
その先で、ガルグ=マク士官学校の生徒たちを救った主人公は、その功績から、自らも生徒になります。
やがてアドラステア帝国とファーガス王国はそれぞれの内乱が、レスター諸侯同盟の地には東方の強国「パルミラ」からの侵攻が勃発し、生徒の貴族子弟たちはその対処に追われます。
その騒動の裏には、フォドラ各地で暗躍する組織「闇に蠢くもの」がありました。

原作通りの分岐
主人公が序盤で入学する「ガルグ=マク大修道院」の士官学校では、3つの学級のうちの1つに所属することになり、この選択によってストーリーが分岐します。これは原作と同じです。
「序章」、「第1部」、「第2部」の計三部に分かれ、情勢が変化していきます。
いずれのルートでも、主人公の宿敵にして原作主人公である灰色の悪魔が属するジェラルト傭兵団は敵に雇われ、終盤に仲間にする契機が起こります。
とにかく雑なifシナリオ
本作は原作のifシナリオなんですが、とにかく全体的に雑です。ディミトリとかエガちゃんとか原作で問題児気味なキャラクターやモニカなど扱いの悪かったキャラにフォローが入る一方で、変な原作改変が目立ちます。
原作で有能だったクロードが下げられるとか原作の味方キャラsageが目立ち、どのルートもラストは根本的な問題が解決しないまま俺達の戦いはこれからだ、するところとか、if設定をうまくいかせていない煮え切らない改変が多いです。
本家無双のif展開といえば、「真・三國無双7」(猛将伝DX)が代表的なように、全キャラ生存のハッピーエンドです。『ゼルダ無双 厄災の黙示録』のif展開もそうでした。だから、本作もベタにあり得たかもしれないハッピーエンドを描くことで原作の悲劇とのコントラストを演出するデザインでよかったのではと思いますが、どのルートも煮えきらない終わり方で、原作キャラ下げ(悪役になったり、無能になったり、性格悪くなったり)展開が目立ちます。
それと主人公の正体の謎など回収されない伏線もあります。
印象としては原作同様のビターなテイストを残しつつ、原作ファンの心理を逆撫でする改変に加え、どのエンディングもさらに歯切れを悪くしたようなデザインで、拙い二次創作のような腑に落ちない内容です。
ゲームメカニクス
戦闘
基本
基本のシステムは、前作の『FE無双』、『風花雪月』、『ゼルダ無双 厄災の黙示録』『戦国無双5』がベースです。システム面は大幅に梃入れされて順当進化してます。
属性じゃんけんのマイナーチェンジ
剣、槍、斧の三すくみに加えて、弓、籠手、魔法の三すくみが追加されました。また、騎士団を配備することで、苦手な相性を克服したり、得意な相性を強化したり、前作のバランスの悪さを解消しました。
前作は、1キャラにつき1種類の武器しか使用できず、属性が剣に偏りすぎていました。対して本作では1兵種につき1武器種なのは同じであるものの、兵種変更ができるため、偏りの問題が解決しました。
チーム戦
前作からプレイヤーが操作するキャラは十字キー上下で素早く切り替え可能です。操作キャラは基本的に1~4人で、自軍のメンバーはマップによって最大8人を自由に選べるものの、そのうちの4人は指示に従うだけで操作は最後までできません。操作していないキャラは、指示に従って行動します。
戦国無双4(DX)、戦国無双5(無印)、OROCHIシリーズ(1.2[Ul].3[Ul])のアンリミテッドモードに似たデザインです。
また本作では指示に応じて攻撃力や防御力が上昇するスキルが実装、これにより自分が操作しない場合でも、キャラを有利にできるようになりました。
育成
基本
クラスチェンジの仕様は原作に概ね一致しており、前提となる兵種をマスターし、さらに対応した資格試験パスを使うことで新しい職に就くことができます。キャラごとに得意兵種が存在し、多くの兵種経験値を獲得できるほか、無双奥義が個別の専用モーションに変化します。
スキル
ユニットに様々な恩恵を与える固有能力です。
個人スキルはキャラごとに設定されたスキルで、アクション系、補助系、戦術系の3種類があり、キャラクター全員がこの3種類の個人スキルを1つずつ所有します。
兵種スキルは兵種ごとに設定されます。
紋章スキルは限られたキャラクターにのみ付与されています。
装着スキルは兵種のレベルを上げることで修得したものを着脱するスキルです。同じ兵種でも、キャラによって習得できる装着スキルは異なります。キャラごとに1つだけ、得意兵種とは別の特定兵種をマスターすることで修得できる「天賦スキル」があります。
戦技
武器の耐久と引き換えに行う特殊アクションです。基本的に兵種に応じた種類の武器のみ使用可能です。魔法も「魔道書」の戦技という扱いになりました。
『戦国無双5』の閃技と似た感じです。
自由度
紋章があれば、事実上すべての武器を兵種変更によってデメリットなしで使用できるため、キャラの育成のバリエーションが膨大です。
本作では力と魔力の両方の合計を攻撃力とすることができる装着スキル「両刀使い」が実装され、力と魔力がそこそこの器用貧乏キャラのポテンシャルが向上しました。
また、天賦スキル(隠しスキル)や他キャラからの戦技伝授などのアプローチもあります。
コラボ無双は概してデッキビルドの余地が少ないですが、本作はビルドのアプローチが極めて豊富です。
総評
システムは大きく飛躍したがファンディスクとしては…
システムが前作から大きく発展した一方で、原作のファンディスクとしては地雷要素をふんだんに孕んだ内容で、P5Sや『ゼルダ無双 厄災の黙示録』のような、原作ファン全員におすすめできる内容ではなくなっています。






