始めに
始めに
今日は名作、『Ghost of Tsushima』についてレビューしていきます。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
7 | 9 | 4 | 7 | 10 | 5 | 優(42) |
- 圧倒的な絵作り、グラフィック
- 遊びやすいオープンワールド
- 遊びとしては革新に乏しい
- やや大味な戦闘
ゲームフィクション
あらすじ
文永11年(1274年)。元朝の将軍・コトゥン=ハーンは、日本を征服するため大船団を率いて対馬国の小茂田浜へと進みます。迎え撃つ対馬の武士団はわずか80。対馬国の地頭である志村家当主の指揮で戦うも兵力差に圧倒され、大将・志村と主人公・仁の2名を残して全滅します。

圧倒的な絵作り
この作品がオープンワールドとして画期的だったのは、その圧倒的な絵作りです。ゲームメカニクスについての情報を伝えるアイコンは最小限に抑えられています。『アンチャーテッド』シリーズ(1.2.3.4)などとこの辺り近いでしょうか
また目的地を示すマーカーもマップにしかなく、風向きという形でフィールド上では目的地が示されます。ゲームメカニクスに関する情報を伝える指標が画面の中でノイズにならず、ゲームフィクションの中での合理的演出に組み込まれる工夫に脱帽です。ゲームメカニクスのデザインの革新性よりも、その演出の革新性という点で『ペルソナ5ザ=ロイヤル』などと重なります。
グラフィックも、リアリズムよりも黒澤明(『七人の侍』)や詩的リアリズム風の、セットが醸すムードを再現しようとするようなコンセプトと見受けられ、圧倒的な完成度です。例えば木下恵介(『楢山節考』)、ティム=バートン(『バットマン』)、小津安二郎(『東京物語』)のフィルムのような、セットという人造物が醸す甘美なムードを巧みに備えています。

武士道という規範の中でのドラマ
この作品は森鴎外『阿部一族』、小林正樹監督『切腹』のような、武士道というモラル、規範の中での個人のあり方や実践をテーマとする物語になっています。鎌倉時代なのに江戸時代っぽい武士道徳世界なのはご愛嬌。
主人公の叔父上・志村は、一見不合理に武士道に殉じているように見えながら、武士道という規範の中で合理的に振る舞っていることが描かれています。最後に主人公に課される、武士として期待される役割を演じさせることで自己実現を図るか、あくまで個人としての生き方にこだわるかの選択は、プレイヤーにも重い決断を迫ります。
ゲームメカニクスについて
オープンワールド
この作品はオープンワールドゲームになっていて、3D空間としてデザインされたゲームのマップがシームレスにつながっています。不確実情報の探索、テクスト、サイドストーリーなど、探索のボリュームはあるものの、できることは少なくルーチンワークもやや短調で、ゲームメカニクスのデザインとして革新的な部分は少ないです。やはりこのゲームの肝はゲームフィクション部分、その圧倒的な演出にあるといっていいでしょう。
サイドストーリーも面白いですが『ウィッチャー3』の方がディープな内容がありました。
戦闘(パリィ、スタイルチェンジ、ステルス、暗具)
戦闘は剣戟部分はジャスト入力のカウンター主体で立ち回るデザインになっています。また防御、カウンター不能の危険攻撃もあり、それは回避しなくてはいけません。それに加えてステルスや強力な暗具もあります。
ゲームバランスはやや大味で、暗具を使うと一気に簡単になります。映画らしく立ち回るにはカウンターや回避を極めなくてはいけないので、プレイヤーのスキルが要求されます。また、型の変化によるバリアブルアクションがあり、それぞれの型はエネミーのタイプ別に相性があって、使い分けが要求されます。
また、戦闘開始前に居合抜き(タイミングよくボタン入力)によるアクションがあり、演出も魅力的です。
総評
圧倒的な絵作りの良質なオープンワールド
ゲームフィクション部分の演出は圧倒的でオープンワールドとしてのデザインも高水準です。ただ革新性に乏しいです。
関連作品、関連おすすめ作品
・『Rise of the Ronin』:日本舞台のオープンワールド。
・『レッドデッドリデンプション』シリーズ(1.2):映画的絵作り。