始めに
始めに
『ファイアーエムブレム 風花雪月』についてレビューを書いていきます。スピンオフに『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』があります。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
9 | 9 | 4 | 8 | 8 | 2 | 優(40) |
- キャラゲーと戦記物の調和
- 完成された育成要素
- 魅力的なキャラクター
- 一部分岐がリソースの共通部分が多い
ゲームフィクションについて
あらすじ
主人公は傭兵団の団長でもある父・ジェラルトと共にルミール村に滞在していました。盗賊に襲われ救援を請う3級長を救った主人公は、ガルグ=マク大修道院の士官学校に教師として招かれ、3つの学級からどれか1つを選択して生徒を指導します。
西方教会が聖廟を襲撃した騒動で、英雄の遺産である「天帝の剣」を手にした主人公は、これを扱えたことから天帝の剣の管理を任されます。
![](https://hazakishiori.com/wp-content/uploads/2023/07/fcc143226c36a7bc37e51e90506fd3c3-1024x578.jpg)
架空戦記ファンタジー
『ファイアーエムブレム』シリーズといえば、一作目から架空戦記ものとしての特性を顕にし、DQシリーズのような、トマス=マロリー風の勧善懲悪な中世騎士物語風のハイファンタジーとは一線を画する路線を打ち立てました。J=R=R=トールキン以降見られるようになった、世界設定に関して神話学、文化人類学、歴史学的知見を織り混ぜ緻密にデザインし、その中でのエージェントやシステムの大局的な動向をリアリスティックに記述する内容になっており、ゲームではその後オウガバトルシリーズや、FFT.FF12(ZA)などに近い路線が見出せます。漫画では荒川弘『鋼の錬金術師』、諫山創『進撃の巨人』あたりと近いです。
本作もそうした精神を受け継ぎ、戦争の中に生きるエージェントの動向を描写します。
学園もの。架空戦記もの
本作品は「ファンタジー+学園もの+架空戦記」という結構特徴的なジャンルの混合制のになっています。ファンタジーと学園もののフュージョンだとFF8(ヤングアダルト映画ベース)、『ハリー=ポッター』シリーズ(パブリックスクールものベース)などがありますが、それと架空戦記ものを掛け合わせたのが新鮮な印象です。
ちょっと『サモンナイト3』なんかと印象が被ります。
失われた青春のストーリー
本作品はキャラクター一人一人のデザインや描写がすごくイキイキとして明確な輪郭を与えられています。そして序盤の学園パートにおける日常描写のきめ細やかな積み重ねがあるからこそ、後半の戦争物語としての悲惨さが一層胸を打つものになっています。路線としてはフローベール『感情教育』、ジョージ=ルーカス監督『アメリカン=グラフィティ』、チミノ監督『ディア=ハンター』、こうの史代『この世界の片隅に』などと近いですが、戦争などの社会的狂騒の中での儚い青春の喪失が描かれています。
緻密な人物描写で暴力の残酷さを暴く点ではラスアス2に似ています。
ゲームメカニクスについて
ルート分岐、学園パート
本作では最初に三つの学級(「黒鷲の学級(アドラークラッセ)」「青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)」「金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)」)から一つ選択して担当になります。それぞれに応じたシナリオがあり、ここでまずルートが分岐します。黒鷲ルートはさらにルートが後半で分岐し、片方は金鹿後半と共通のルートです。
本作のアドベンチャー要素の学園編では、1章につき1か月単位で進行します。平日は指導で生徒たちの技能レベルを上昇させられ、休日は大修道院の散策やフリーマップへの出撃などといった自由行動が行えます。
散策では、生徒たちとの絆を深めたりできます。支援レベル(好感度)が「覚醒」同様にC~Sの四種があります。全員と支援及びSがあるのは主人公のみとなり、最終シナリオ直前にプレイヤーが支援Sになりたいキャラクターを決めてクリア後のイベント、いわゆる後日談でプロポーズするようになっています。全体的に3以降のペルソナシリーズ(3[P].4[G].5[R])とちかい印象です。
とにかくこのアドベンチャー要素はイベントの厚みに加えて育成の戦略性が高く、SRPGとしての魅力にダイレクトにつながっていて圧巻です。
デッキビルド
装備や騎士団
本作では剣、槍、斧、弓のほかに、「籠手」という武器が新たに加わりました。威力が低く軽量で命中率が高く、自分から攻撃すると必ず2回攻撃を行います。
新要素として、1ユニットにつき一種類の騎士団を配備できます。配備することでパラメータを上昇させられるものの、ダメージで兵力が消耗し兵力が0になると、補正を受けられません。騎士団にはランクが存在し、ランクの高い騎士団を配備するには「指揮」の技能レベルを上げる必要があります。また、騎士団を配備することで、「計略」と呼ばれる特殊行動も発動できます。
育成
本作では能力値とは別に技能レベルがキャラごとにあり、技能レベルが上がると強力な武器や騎士団を装備できるようになる、着脱可能なスキルや戦技を覚えるほか、クラスチェンジの条件になっています。学園パートの平日では授業として、教師たる主人公は目標の設定と直接指導を行うことで、生徒たちの技能レベルを上げられます。
技能レベルを上げて資格試験をクリアさせることで別のクラスに変更でき、条件をまた満たすと上位クラスの資格試験を受けられます。FEのクラスは基本的にFF3.5のジョブのような横並びの感じではなく、縦並びの構造で、取捨選択を強いられます。聖剣伝説シリーズ(1.2.3{TOM})のクラスチェンジに近いです。
総評
全体的に育成の自由度が高いです。アドベンチャーパートにおける戦略的な生徒の育成が肝要になっているので、育成シミュレーション的な魅力が生まれています。本作と同様に周回を前提とするSRPGの『トライアングルストラテジー』では、育成の自由度が低いため、周回のモチベーションが少ないのですが、本作はアドベンチャー要素に加え、育成、デッキビルドの自由度の高さが周回を少しも気にならさせないのが圧巻です。
総評
シリーズ最高傑作
シリーズ最高傑作と言っていい内容です。おすすめ。
関連作品、関連おすすめ作品
・『ファイナルファンタジー零式』(HD):ファンタジー学園もの
参考文献
ゲームカタログ@Wiki ~名作からクソゲーまで~