始めに
始めに
『ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ』レビューを書いていきます。ビルダーズシリーズ(1.2)の1です。今からなら2をお勧めしますが、本作もシナリオがいいので楽しいです。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
8 | 8 | 4 | 7 | 8 | 2 | 優(37) |
- マイクラとしてもドラクエとしても名作
- 素晴らしいシナリオ
- エンドコンテンツがほとんどない
ゲームフィクションについて
あらすじ
竜王は魔物の軍勢を率い、アレフガルドを襲います。伝説のロトの血を引く勇者が竜王の軍勢に挑むが、竜王の罠に嵌まってしまいます。大地は引き裂かれ、城塞都市メルキドの守護神ゴーレムは人間を襲い、美しい湖の街リムルダールは毒の沼地に、温泉の街マイラは溶岩に覆われます。人々はものを創り出す力を奪われ、住む地を追われ、魔物が世界を支配しました。
それから数百年後、この地に新たな救世主が現れます。精霊ルビスの導きによって現れた「ビルダー」は失われた「創造する力」によって滅びた街を復興させます。そして竜王に立ち向かっていきます。

DQ1作目のバッドエンド後の世界
本作は、まずシナリオが素晴らしいです。『マインクラフト』などのサンドボックスジャンルは往々にして、シナリオ要素は希薄になりますが、本作はドラマも充実しています。
本作品はDQ1のバッドエンドの後の世界ということになっています。竜王によって支配され荒廃したアレフガルドが舞台になっています。着想として、非凡なものだと思います。このデザインのおかげでDQ1をプレイしたファンには嬉しいサービスも多いし、未プレイでも十分楽しめます。
また頭身の低いキャラクターのグラフィックも愛おしいです。
作品のテーマとうまく融合したゲームメカニクス
本作はサンドボックスジャンルと、ゲームフィクション部分のテーマの関連付けがうまいです。サンドボックスとは、基本的にはゲーム空間に、プレイヤーがリソースを回収しながらさまざまに加工するエコノミー要素と、加工して作ったオブジェクトを配置し環境をデザインしていく戦略性、自由度に重きを置くゲームジャンルです。本作はそうしたゲームメカニクスの特徴に対して、ゲームフィクション部分において、人々がものを自由に作る力を奪われた世界の救世主である主人公の戦いという意味づけを与えています。
本作品の世界においては竜王率いる魔物たちによって、人間はものを作ることができなくなり、文化的な生活を営めなくなり、文明を失っています。模倣による文化的学習を通じて科学、文化(芸術、倫理学)を継承していくという営みは岩明均『寄生獣』にも描かれるように、人間の本性のはずです。文化的学習、文化進化の規模とスピードこそ、人間を他の種から区別して特徴づけるものです。DQシリーズにおいても、5において3代の間で継承される正義への意志という形で、文化的学習のモチーフを描いていました。本作品においてはそんな人間の本性たる創造力、文化的学習能力が損なわれた世界において、それを回復し、人間の文化的営みを再生しようとする主人公の活躍を描きます。
ゲームメカニクスについて
サンドボックス(エコノミー、環境デザイン)&ARPG
本作は『マインクラフト』風のサンドボックスとARPGを掛け合わせた内容になっていて、なかなか先鋭的なジャンルの実験で面白いです。『フォールアウト4』でもクラフト要素が追加されたものの、あちらは劣悪なデザインだった一方、本作は巧みにサンドボックスとARPG要素の調和を図っています。
ただ基本的にはサンドボックスが主で、ARPG要素、成長要素はサブ的なデザインです。フィールド探索で資源リソースを回収、オブジェクトに加工し、それによって環境をデザインしていくことがゲームの中心です。戦闘は攻撃や走って避けるなど、ごくシンプルな操作のみでアプローチが少なくなっています。また育成要素は「いのちのきのみ」を消費することによるHP上昇に一本化されています。
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・『テラリア』:サンドボックスゲーム