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神ゲー未満良作以上『アサシン クリード オデッセイ』レビュー!

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始めに

始めに

今日は『アサシン クリード オデッセイ』についてレビューを書いていきます。オープンワールドのアサクリシリーズ(Or.OD.Va)です。

独創性完成度快適さボリュームフィクションその他判定
784972優(37)
  • 全体的にハイクオリティ
  • 質もボリュームも圧倒的
  • 探索も快適
  • やや独自の遊びに乏しく単調さを感じる
  • 外枠としての現代編が新規に分かりにくい

ゲームフィクションについて

あらすじ

 紀元前、ペロポネソス戦争中のギリシャが舞台で、主人公はアレクシオス/カサンドラ(男女)を選択できます。二人はスパルタの将軍の子供で、レオニダス一世の孫です。主人公に選択しなかった方は、敵として立ち塞がります。

じいじ

賛否両論のオープンワールドRPGだが好印象

 世間的にはオープンワールドRPGシリーズ(Or.OD.Va)は古参中心に不評ですが、個人的には肯定的に捉えています。シリーズらしさが損なわれたとしばしば言われるのですが、このシリーズの独自の魅力は歴史劇、時代劇ジャンルの中でもっぱらロケーションのグラフィック周りの完成度の中にあって、その中で大味なステルス、パルクール、戦闘を楽しむ作品であって、そもそも元々ゲーム性の部分において固有の特徴的要素はあまりなかった気がしますし、基本アクションもある程度は継承されています。

 とはいえ『ファークライ』シリーズ(1.2.3.4.5.6.pr.nd)のような従来あったお手軽な魅力は損なわれている印象なのでミラージュみたいな路線と分けたらいいかもと思います。

タイムトラベルSFシリーズ

 単純に説明不足なので、現代パートが始まると混乱するプレイヤーも多いでしょうが、本シリーズは実はタイムトラベルSFになっています。

 「かつて来たりし者」が、人類を支配するために使用した「秘宝」があり、テンプル騎士団(やその系譜の組織)は「秘宝」を使って、人類を支配する陰謀を宿し、世界中に眠る「秘宝」を探しています。一方、アサシン教団は「秘宝」を使って人類を支配しようとするテンプル騎士団に対抗しようとしています。基本的にプレイヤー(主人公)はアサシン教団側です。ちょっと『トゥームレイダー』リブートシリーズ(1.2.3)のような感じでしょうか。

 そしてアニムスと呼ばれる装置を使って遺伝子記憶を追体験することで、どちらの組織も「秘宝」の場所を探ろうとしています。アレクシオス/カサンドラも、アニムスによって現代のアサシン教団が記憶を追体験する過去の存在です。

 すごく面白い設定だとは思っていますが、ストーリーにうまく生かせていないのと説明不足なので、新規ユーザーには、ごちゃついていてとっつきにくい印象が生まれています。チャーリー=カウフマン監督『マルコヴィッチの穴』のような感じで、やや設定倒れになってしまっていて、やっぱりこの物語世界、フィクションの設定の不完全燃焼気味な部分が、本作品を『ウィッチャー3』や『Ghost of Tsushima』などの類似のオープンワールドアドベンチャーに見劣りする印象を与えてしまいます。

アレクシオス/カサンドラ主人公のサンダル時代劇

 本作品では古代ギリシア世界におけるプレイヤーの分身はアレクシオス/カサンドラという兄弟です。選ばなかった方はコスモスの門徒という敵組織として登場します(コスモスの門徒はギリシアを裏で牛耳る組織ですが、テンプル騎士団の前身というのではないようです)。『NARUTO』みたいな、ボタンの掛け違いでは立場が逆だったかもしれないすれ違いが面白いです。シリーズではユニティに似た、兄弟のすれ違い(ユニティは血はつながってないですが)が描かれます。

 ストーリーはちょっとべたなソードサンダルながらも面白そうな印象が最初はあったのですが、中弛みがするのと全体的に演出に緩急が効いていなくてあんまりドラマが盛り上がりません。あと、プレイヤーキャラクターがプレイヤーの分身、鏡像のようなデザインで性格の輪郭がぼやけているのですが、これもドラマの盛り上がらさに拍車をかけます。

ゲームメカニクスについて

オリジン路線、オープンワールド化、ナラティブチョイス

 本作品は前作オリジンと同様に、従来シリーズの箱庭ステージの規模と自由度を拡大した、オープンワールドゲームになっています。本作品はなんというか、いろんなオープンワールドゲームのいいとこどりのような感じで、しかも全然それが歪なパッチワークのような印象になっておらず、高い次元でさまざまな要素を吸収して、昇華しています。『ウィッチャー3』のような、ストーリーやサブイベントのナラティブチョイスによる分岐要素が前作より加えられ、よりシナリオの自由度が増しました。また、ブレワイのように、主人公はパルクールでほぼあらゆる壁を伝ってオープンワールドを駆け回ることができるので、爽快感はひと塩です。

 『アサシンクリード』シリーズは元々『プリンスオブペルシャ』シリーズなどがベースになり、ビデオゲームのプレイという身体性を伴う言語行為において、プレイヤーの身体の延長たるプレイヤーキャラクターを操作して、歴史劇、時代劇の世界を自由に闊歩できる部分に魅力がありました。本作品もそうしたシリーズの伝統をうまくオープンワールドに落とし込んだという点でブレワイ、MHW(IB)、『エルデンリング』などと近いでしょう。

 全体的に『ウィッチャー3』の影響を強く感じさせるオープンワールドアドベンチャーです。ただサブイベントの質と量に関して『ウィッチャー3』と匹敵するかどうかというと疑問です。どれもどうにも内容的に薄味で、ジェネリック『ウィッチャー3』みたいな印象です。これはやはり先述した現代編の要素がうまくストーリーの中において機能せず、設定倒れになってしまっているのも原因で、ストーリー、世界観部分の消化不良な印象が、アドベンチャー部分の質を落としています。

戦闘(パリィ、ジャスト回避、スキル)

 戦闘はパリィ、ジャスト回避、スキルを駆使して立ち回るデザインになっています。パリィは『ダークソウル』シリーズ(1.2.3)と近く、タイミングよくコマンド入力するとパリィに成功し、敵の体勢を崩し強烈な攻撃をぶつけられます。『ダークソウル』シリーズ(1.2.3)よりも受付時間が長いですが、隙も大きく、集団戦が前提のデザインになっています。シリーズ(Or.OD.Va)のヴァルハラでは戦闘がさらにソウルライクになります。

 敵の攻撃をジャスト回避すると敵の動きが一定時間スローになるため連続攻撃を与えられます。『ベヨネッタ』シリーズ(1.2.3)、ブレワイと近いデザインです。シリーズ(Or.OD.Va)の前作からアドレナリンゲージが継承され、リソースとして用途が増えています。アドレナリンゲージ(時間経過などで蓄積)を消費して発動する強力なアビリティ(いくつかを選択しスロットにセットする)があって、戦略性を加えています。

 全体的に前作よりアプローチが増えてブラッシュアップされています

デッキビルド

主人公

 獲得できるスキルポイントには限りがあるため、スキルツリーでのアビリティ獲得は、計画的にデザインする必要があります。けれどもデッキビルドの幅が広く楽しいです。

 またディアブロシリーズ(1.2.3[EC].4)的な装備品のハクスラ要素もあり、ビルドの幅はかなりのものです。『Rise of the Ronin』と同様に、探索のアクセントになってます。シリーズ(Or.OD.Va)のオリジンではハクスラはほぼないに等しく装備にレベルとレアリティがあるくらいだったので、ハクスラは大きく拡大しました。ヴァルハラでは廃止されてしまいます。

海戦、傭兵周辺のデッキビルド

 アドレスティア号という船を自由に操り海を移動できます。強化要素があるほか、ファストトラベルのポイント、予備のインベントリ、クエスト受注の掲示板があり、簡易的な拠点でもあります。各地にある船着き場でボタンを押すと、その場に呼べます。

 船には副官を配備でき、副官にできるキャラクターごとに異なるスキル・ステータス上昇効果を持ちます。一部を除く作中の登場人物は気絶させて捕獲勧誘することで、副官として採用できます。コモン・レア・エピック・レジェンドと強さに応じて4段階の区分分けがなされており、高いランクのキャラクターの方が多くの種類のスキルを持ちます。MGS5のマザーベース経営のような感じで、従来の弟子システムに相当します。
 海上にはアテナイ・スパルタ・海賊・無所属の商船など様々な陣営の船が往来し、IVと同様に自由に攻撃できます。大砲が無いので、弓矢やジャベリンがメインです。相手の船の耐久が無くなると炎上して動かなくなり、横付けして乗り込むか撃沈か選べます。乗り込んだ場合は白兵戦となり、甲板にある宝箱を開けて装備を入手できます。シリーズ(Or.OD.Va)のヴァルハラでは海戦は廃止されます。

 また本作には傭兵がいて、犯罪を犯して賞金首になると敵対関係となり襲ってきたりします。倒すと装備が手に入ったり、ティアというレベルが上がり、さまざまな恩恵をえられます。また先述したように捕縛して仲間にできます。

征服戦争

 各都市国家には「国力」が設定されており、「兵士を殺す」「軍需物資を燃やす」「指導者を暗殺する」「軍資金を盗む」などで国力を下げられます。国力が下がると情勢が「強大」「衰退」「脆弱」と変わり、国力が高い状態では指導者の警備が厳重ですが、下げると警備が薄くなるので暗殺しやすくなります。どの都市国家も「スパルタ」か「アテナイ」どちらかの同盟国で、国力が「脆弱」まで下がると敵側の都市国家の軍勢が攻めてきて征服戦争が起きます。この征服戦争に、「防衛側」か「攻撃側」を選んで参加できるのです。
 戦場では既に敵味方入り乱れて戦っており、双方に戦力ゲージがあります。敵の兵士や指揮官、傭兵を倒すと敵の戦力ゲージが減っていき、ゼロにすると勝利です。逆に味方の戦力ゲージか主人公の体力がなくなると敗北です。征服戦争に勝利すれば懸賞金がすべて解除され、報酬を得られます。防衛しても攻撃しても都市の所属が変わるだけで、シナリオの変化は無いですし、指導者を殺害しても国力が回復すれば新しい指導者が赴任するので、征服戦争ができなくなる事態はありません。

 シリーズ(Or.OD.Va)のヴァルハラでは、これは襲撃になります。

総評

独創性、完成度、遊びのバリエーションはかなりのものでありつつ…

 ここまで書いてきた通り、本作のオープンワールドとしての独自性、完成度、遊びのバリエーションはかなりの水準である一方、なぜか作品としてはパッとしない印象を受けます。『ウィッチャー3』よりも戦闘、デッキビルドの完成度は高く、お使い要素も希薄であるにも関わらず、ストーリーや世界観の重厚な味わいに由来するアドベンチャーゲームの滋味においては劣っている印象を受けます。これはやっぱり、これまで書いてきた通り、本シリーズがタイムトラベルSFとしての設定を持て余していて、微妙にこれがノイズになってしまっていることで、世界観や設定の品質を落としている部分に由来している気がします。

 このせいで結局、遊びのバリエーションはまあまああるにも関わらず、全体としては作業感が強く、単調で退屈な印象もしてしまいます。『サイバーパンク2077』もそうでしたが、こうしたゲームフィクション部分の欠陥が、オープンワールドアドベンチャーの風味を殺しています。

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