始めに
始めに
『バイオハザード7』についてレビューを書いていきます。8で完結するイーサンのドラマの前編です。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
6 | 7 | 4 | 6 | 7 | 4 | 良(34) |
- 探索が楽しくなって昔のバイオに回帰した
- バランスもそこそこ
- ボリュームが少ない
- クラシックなホラーの雰囲気がなくて、南部ゴシックっぽい。
ゲームフィクションについて
あらすじ
主人公イーサン・ウィンターズは、3年前に行方不明となった妻ミアをずっと探し続けていました。2017年7月、ミアから「迎えに来てほしい」というメッセージが送られます。イーサンはメッセージの情報を頼りに、ルイジアナ州ベイカー農場の跡地に向かいます。イーサンはベイカー邸でミアと再会するものの、次第にミアは様子がおかしくなり、何かに取り憑かれたかのようにイーサンに襲いかかってきます。やむなくミアを打ち倒すイーサンだったが、その直後に背後から謎の男に殴られ、意識を失います。
目を覚ましたイーサンが見たものは、おぞましい料理の乗った食卓を囲むベイカー家の住人です。ベイカー家の主人ジャック、その妻マーガレット、猟奇趣味の長男・ルーカス、そして車椅子に座り動かない謎の老婆。
バイオハザード(?)
本作は『バイオハザード4』とも似て、シリーズを刷新しようとする試みゆえに賛否両論でどちらかというと肯定意見が多い、みたいな印象です。私も5.6よりは好きだけど、そんなに好きではないです。
まずこれまでのシリーズは『バイオハザード』(『バイオハザード』(02)としてリメイク)のルーツである黒沢清監督『スウィートホーム』ゲーム版から、ゴシックホラー的な様相が強く、ロケーションも古典主義建築の醸す甘美なムードに彩られていました。一方、本作はトビー=フーパー監督『悪魔のいけにえ』のような、ゴシック小説のサブジャンルである南部ゴシック風のホラーで、アメリカの田舎にある農家の邸宅が舞台になっています。ここにはシリーズの初期作品にあった古典主義建築のバロックな狂気の醸す芳醇な不穏なムードがないというか、恐怖の質として異なっています。
コミュニケーションのままならず、独特の論理で動く狂人に対する恐怖を描くというコンセプトでも『悪魔のいけにえ』と似ていますが、割と結構そのまんま『悪魔のいけにえ』すぎて、何だか違和感です。似たようなコンセプトのホラーゲームに『SIREN』シリーズもありますが、あちらが伊藤潤二やクトゥルフから日本独自の南部ゴシック的世界観を構築していたのに対し、本作は作品のイメージソースがそのまんま『悪魔のいけにえ』です。終盤はリベレーションズ2のような精神世界のホラー、SFホラー要素が強くなりますが、序盤と後半で雰囲気も変わりすぎて散漫になってます。
個人的に、私がこのシリーズ(1{リメイク[HD]}.2[RE2].3[RE3].4[RE4].5.6.7.8.リベ[アンべ].リベ2.0)に期待しており、5と6で損なわれていると感じていたのは古典主義建築の醸す冷たく湿った艶やかな恐怖だったので、その意味ではピンとこなかったです。
『Outlast』化
本作は一人称視点で狂人の巣食うロケーションから脱出する、ビデオカメラが重要なモチーフになるなど、かなり『Outlast』を(あと映画『REC/レック』)意識しています。主人公・イーサンというキャラクターも、DQシリーズのような感じでややプレイヤーの鏡像のような感じになっていて、キャラクターとしての輪郭が曖昧になっています。このせいで7.8と続くイーサンのドラマの感動が薄くなっています。
本作は5,6と比べるとホラー要素は強いですが、いろいろな作品のパッチワークのようで、このシリーズの伝統の中で確立してきたフィクション部分の個性が希薄になっています。
ゲームメカニクスについて
アドベンチャーゲームとして回帰、FPS、エコノミー
本作最大の評価点は、5と6で希薄になりつつあった箱庭アドベンチャー要素が復活したことです。劣化ギアーズみたいな通俗TPSになりつつあったバイオが、アドベンチャーゲームとしての魅力を備えて帰ってきました。ベイカー邸というロケーションは作り込まれていて、探索が楽しいです。
また『バイオハザード4』でビハインドビューのTPSに変更した時と似た、語りのフレームの実験がなされています。本作は『Outlast』のようなFPSのアドベンチャーになっています。ビハインドビュー同様に、背後が死角になるため恐怖が演出されます。またプレイヤーの鏡像としての性格が強まり没入感を高めます。ただできればTPS視点も入れて欲しかったです。
また4からショップの登場でリソースの収集管理と配分のエコノミー要素、それが演出するサバイバルのシミュレーション要素が希薄化しつつありましたが、本作は一部敵の無敵化、弾薬の制限などでそれが復活しました。体術が消滅した一方で、防御アクションが追加され(ヴィレッジにも継承)、手で攻撃を防ぐだけでありえないくらいのダメージを軽減します。
ボリューム不足
DLC(ミニゲームとクリス、ゾイをめぐる2つのシナリオ)が現在ではあるものの、本編のボリュームは短いです。
あとヴィレッジ、リベレーションズ2とかにも似て、周回するとテンポ悪い演出が多くて、元々やりこむ要素も少ないのに、やり込みの気力を削いできます。やっぱり伝統的なシリーズの魅力は周回でのやり込みも大きいと思うので、なんとかしてほしいところ。
関連作品、関連おすすめ作品
・『ALIEN: ISOLATION』:一人称で非力な主人公のホラー
関連作品、関連おすすめ作品
『ラストオブアス』シリーズ(1.2),『バイオハザード リベレーションズ2』,サイコブレイクシリーズ(1.2):資源のエコノミー要素のホラーシューター。