始めに
始めに
逆転裁判はミステリーアドベンチャーの代表的な作品です。今日はそんな作品について感想レビューを書いていきます。若干のネタバレを含みますのでご注意を。
シリーズ(1[蘇る].2.3.4.5.6)の総評的なレビューです。このパッケージにはシリーズの1[蘇る].2.3収録です。
独創性 | 完成度 | 快適さ | ボリューム | フィクション | その他 | 判定 |
8 | 9 | 3 | 6 | 8 | 2 | 優判定(36) |
- ハイクオリティなアドベンチャー。独創的システム
- 魅力的キャラクター
- シリーズの進化のなさ
- 倫理的な欠点が多い
ゲームフィクションについて
大まかな設定やストーリー
主人公・成歩堂龍一は弁護士です。ヒロインとなる綾里真宵などと協力し、依頼人を最後まで信じ、無罪を勝ち取ろうとします。
またこの世界で特徴的なのは霊媒の存在です。霊媒が実際に可能である世界において、時にそれが捜査に活用されます。けれどもとある事件をきっかけに裁判の証拠品としての能力は乏しく、社会からは色目で見られているような扱いです。
魅力的なキャラたち
この作品は個性あふれるキャラクターに富んでいます。主人公・成歩堂龍一を始め、一癖も二癖もあるコミカルなキャラクターばかりです。依頼人も真犯人も、みんなキュートでチャーミングなので、遊んでいて楽しいです。逆転裁判シリーズ(1[蘇る].2.3.4.5.6)は亜愛一郎シリーズ(狼狽.転倒.逃亡)など泡坂妻夫作品のパロディが多いですが、泡坂作品と似たようなユーモアの愉しさが魅力です。
古典ミステリネタの豊富さ
この作品は、古典的なミステリーのパロディに満ちています。弁護士ものの『ペリー=メイスン』シリーズに加え、J.D.カー、エラリー=クイーン、刑事コロンボシリーズなどからの影響を伺わせるトリックの引き出しの多さ、伏線のたくみさには舌を巻きます。
このシリーズは概ね4〜5エピソードの連作短編形式なのですが、作品全体として一つの連続性を成しており、複数エピソードを通じて回収される伏線の緻密さには感銘を受けます。
たまにモヤモヤ
このシリーズ(1[蘇る].2.3.4.5.6)は豊かなプロットが魅力なのですが、たまに倫理的にモヤモヤする展開があります。『逆転裁判2』では、主人公が真犯人を死の危険に陥れて不利な自供を引き出す展開があります。『逆転裁判6』では、数々の冤罪事件を生み出してきたと推察される検事が、事情があったとはいえほぼお咎めなしという展開があります。
この作品は割と、弁護士とは何か、法にとって正義とは何かといった法哲学、法社会学、倫理学的テーマが描かれているのに、こうした描写はその瑕疵として捉えざるを得ません。
ゲームメカニクスについて
画期的だったアイテムを利用するナラティブチョイス
このシリーズが当時画期的だったのは、そのゲームメカニクスのデザインの秀逸さでした。当時、ミステリー系のアドベンチャー作品といえば神宮寺三郎シリーズなど、総当たり式の探索アドベンチャーが主流でした。そうした作品において、あくまで探索がメインであって、プレイヤーがゲームメカニクスの中で推理、推論を働かせる余地は少ないものでした。
そんな中で現れた『逆転裁判』は従来の総当たりアドベンチャー方式の捜査パートと、法廷パートの二重のパートで構成された作品でした。法廷パートは、「証拠品」であるアイテムがプレイヤーに示され、「証言」としての証人の台詞テクストとの矛盾を発見し、摘示するというデザインになっています。「証拠品」のテクストと「証言」のテクストには一回の「証言」につき大抵一つの矛盾があります。ここをプレイヤーが発見、推論するのがこの作品の遊びのキモです。適切なナラティブチョイスに失敗すると心証ゲージが下がり、ゼロになるとゲームオーバーです。
これまでの探偵を主人公とするゲームがプレイヤーの推理の余地が乏しかったのを考えると、このゲームメカニクスのデザインは画期的でした。
完成され過ぎていたからこそ…
このシリーズのデザインは一作目から斬新かつ完成されていました。けれどもそうであるからこそ、シリーズ全体として見ると遊びの部分はむしろ停滞しています。『戦場のヴァルキリア』シリーズ(1.2.3.4)、『デッドライジング』シリーズ(1.2.3.4)、『バイオハザード』(0の記事でも言及)シリーズ、『ヒットマン』リブート三部作シリーズ(1.2.3)などと似て、偉大すぎた一作目が、シリーズ全体を乗り越えられぬ壁として呪縛しています。
2からは「サイコロック」など余計な新システムが追加されたことで、ゲームテンポの悪化を招いています。また本作を真似た『ダンガンロンパ』シリーズ(1.2.3)(トリロジー)など、強力なライバルの存在も停滞の印象に拍車をかけました。
他方でこのアドベンチャーゲームとしてのゲーム性としての独創性はその後、乗り越えられない壁として、その後のアドベンチャーゲームや本シリーズに対して立ちはだかっています。
総評
ADVの名作シリーズ、しかし停滞中
初期三部作は推理ADVの革新的な名作ですが、シリーズ(1[蘇る].2.3.4.5.6)は停滞してます。
関連作品、関連おすすめ作品
・『逆転検事』シリーズ、『大逆転裁判』シリーズ(1.2)(1&2):スピンオフ
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